[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
バレンタインデーに晴れて付き合うことになった愛花と斎藤先輩。 かといって普段と変わらないような気はするのだが…、 周りは『やっと』と安堵の息を漏らしていた。 そんな日から一ヶ月、明日はホワイトデー。 -White Day-前編 「ハジメちゃ~んv」 朝っぱらからハイテンションな声が教室に響いた。 「朝から元気だねぇ山崎。」 「少しは静かにできんのか。」 朝から元気な山崎さんにあるものは呆れ、 あるものは不機嫌になっているが、本人は全く気にせず、 名前を呼んだ相手の元へ近づいた。 「何ですか?…山崎さん。」 名を呼ばれた相手は勤めて冷静に返事をする。 山崎先輩がこういうテンションの時はあまりろくなことがないのだが… 警戒しても強行されることが多いため、皆諦め気味。 「ねぇねぇ、ハジメちゃん。明日の予定は?」 「は?」 今日も唐突に切り出された話に、斎藤先輩は首を傾げた。 「『は?』じゃないわよ。明日どうするの?」 「どう…といわれても…。」 「明日?明日…何かあったっけ?」 突然過ぎて理解できない斎藤先輩。 周りにいた面々も顔を合わせて考え込んだ。 が、いつまでも首を傾げている男性陣を山崎先輩は一喝。 「もう!何でみんなわからないの!明日はホワイトデーよ!」 「あ!ああ、そういえばそうだね。」 「ホワイトデー?」 山崎さんの叫びに藤堂先輩がようやく気づいた、 と、手を叩いたが、肝心の斎藤先輩はまだ訝しげな貌をしていた。 「ホワイトデーよ、ホワイトデー!ハジメちゃん知らないの!?」 「いえ…えっと……」 山崎先輩の勢いに、一応否定はするものの、 やはり微妙に要領を得ない斎藤先輩の反応。 山崎先輩は呆れてため息をついた。 「も~ハジメちゃん!ホワイトデーって言ったらバレンタインのお返しなのよ! ハジメちゃんと愛花ちゃんはバレンタインをきっかけに付き合ったんでしょう? だったらちゃんとお返ししなくちゃ!」 そしてバン!と机を叩くと、ずいっと斎藤先輩に詰め寄る。 「「……………」」 何故か必死になる山崎先輩の勢いに圧され、 沈黙する斎藤先輩。そして周りも唖然…。 大体何故山崎先輩がそこまで必死になるのか…。 「や、山崎…;落ち着けって…;」 仕方なく場の雰囲気をどうにかすべく近藤さんが口を開いた。 こういうときに頼りになるのはやはりみんなのリーダー(?)近藤先輩。 「甘いわよ、勇ちゃん!」 ところが山崎先輩、近藤先輩の言葉に耳も貸しません。 それどころか今度は近藤先輩に詰め寄ってまた激しくまくし立てた。 「ハジメちゃんと愛花ちゃんは一応付き合うようになったけど、 二人とも全然今までとわからないじゃないの!」 「……それは…」 「お昼だって一緒に食べてる時もあるけど、大体は私達もいるし。 帰りだって一緒に帰る時もあるけど、ハジメちゃんは部活だし。 ハジメちゃんは休みの日も部活に出てるし。ちゃんとデートとかしてるのかも謎じゃない!」 「……山崎…気持ちはわかるけど;そんなことまで気にしなくても……」 「何言ってんの! せっかく付き合ったのに全然恋人らしいトコないじゃないのあの二人! 愛花ちゃんもいつまでもハジメちゃんのこと『斎藤先輩』って呼んでるし! 付き合って1月経つのに全く進展ないじゃないのよ!」 「…………」 何とかフォローしようとした近藤先輩だったが、 山崎さんの前に屈してしまった。 「というわけで、ハジメちゃん! 愛花ちゃんを誘って明日は二人でデートしなさい!」 「あの…山崎さん…」 「い・い・わ・ね?v」 「……わ、わかりました…。」 本当はよくわかっていないが、 流石の斎藤先輩も山崎先輩には勝てないらしい…。 首を縦に振った斎藤先輩に山崎先輩は満足気に笑った。 *** そんなこんなでお昼。 朝のことがあるため、今日は斎藤先輩は愛花とお昼を食べることにした。 「今日はどうかしたんですか? 金曜日はクラブ活動の打ち合わせがあるから、お昼は忙しいんじゃ…。」 「いや…まあ、たまには良いだろう…。それとも……迷惑か?」 「いえ、そんなまさか。嬉しいですよ。斎藤先輩と一緒にいられて。」 「……そうか。」 「はい。」 何となく、お昼を共に過ごす曜日が決まっていたので、 斎藤先輩の突然の誘いに驚いた愛花だったが、一緒にいられるのはもちろん嬉しいこと。 そう言って返事をした愛花に、斎藤先輩もほっと安心したように笑った。 だが、今日お昼に愛花を誘ったのには訳がある。 山崎先輩の差し金(?)なので、少し思案していた斎藤先輩だったが、 考えてどうなることでもないと、話を切り出した。 「愛花」 「はい?」 「明日なんだが…」 「…明日?」 「ああ…明日…」 「……あ!」 明日のホワイトデーの予定を尋ね、 山崎先輩の(命令)助言の通り、『デート』に誘うと思っていた 斎藤先輩だったが、愛花が突然声を上げた。 「…どうした?」 話の腰を折られ、斎藤先輩は少し不満そうな顔をしたが、 顔を向けた愛花がすごく嬉しそうな顔をしていたのを見て、訳を尋ねた。 「明日、お兄ちゃんが帰ってくるんですよ!」 「…え?」 満面の笑顔のまま、愛花は続ける。 「昨日電話があったんです!ちょっと時間が出来たから日本に戻るって! またすぐ戻らないといけないけど、明日はずっといるって。」 「……………」 心底嬉しそうに話す愛花に、斎藤先輩は口を噤んだ。 愛花の兄は現在外国へ留学中。 たまに電話を、そして手紙をくれるのだが、 会うことは流石に中々できず、長期休暇の時のみだった。 それが、明日突然戻ってくるという。 愛花が喜ぶのは当然だが…、 「明日の朝には空港へ着くそうで、迎えに行くと約束したんです。 お土産を楽しみにしていろって言ってましたけど…」 「……そうか…よかったな…。」 「はい!」 心底嬉しそうにしている愛花に余計なことを言うこともできず、 一先ず同意し、頷いた斎藤先輩。 そんな寂しそうな斎藤先輩の背中や声に全く気づかず、 愛花は力いっぱい頷いた。 ……付き合っているのにまだ前途多難な二人…。 山崎先輩の心配も満更的外れではないのかもしれない…。 *** お昼を終えて、斎藤先輩が教室に戻ると、 予想通りというべきか、山崎先輩が待ち構えていた。 「お帰り~♪ハジメちゃんv どうだった?どうだった?愛花ちゃん誘えた?」 物凄く上機嫌で答えを求める山崎先輩。 100%望みの結果が返ってくると思っている模様。 こんな状態で、無理でした。 等といえば、どうなるか考えるだけでも恐ろしいが、 正直で真面目な斎藤先輩。 「いえ…明日は予定があるそうで…。」 愛花に断られてしまった(というか言ってもいない) 事を山崎先輩に報告。 「・・・・」 「…………」 しばし流れる沈黙。 ビシッと引きつった山崎先輩の表情に周りの面子は冷や汗が流れた。 「予定!?予定って何よ! 『彼氏』のハジメちゃんより優先する予定なの!?」 案の定、沈黙をぶち破ると山崎先輩は斎藤先輩の首を引っつかんで振り回した。 「山崎!落ち着けって!」 「やめなよ;山崎さん!」 あわやとんでもないことになりそうな所を辛うじて ギャラリーがとめに入り一命を取り留める斎藤先輩。 少し苦しそうに表情を歪めるも、先の愛花の話。 雷也の帰国のことを話した。 「え、雷也が?」 「ええ。それで…明日迎えに行くからと…。」 「あ~…それじゃしょうがねぇよな…。」 その話を聞いて、近藤先輩や永倉先輩が頷く。 あの兄妹の仲の良さ、兄のシスコンぶりはもう皆の周知のこと。 「でも…」 それでも納得がいかない、もしくは諦めきれないらしい 山崎先輩はまだ渋っている。 そこへ思わぬ提案をしたのは意外にも沖田先輩。 「だったら、明日雷也さんの迎えに一緒に行けば良いですよ。」 「「「え?」」」 突拍子もない発言に注目する一同。 「で、雷也さんに『妹さんを下さい』とか言えば。」 「プロポーズかよ。」 「でも、雷也さんには認めてもらえないと駄目だよね。」 「それはね~。」 「僕らも一緒に行っても良いですし、フォローしますよ。」 「おお!ワシも協力するぜよ!」 「……総司…お前面白がってないか…?」 「まさか♪」 「………………」 斎藤先輩は複雑そうな顔をしていたが、返事をするまもなく、 話が進んでしまい、もちろん愛花も皆の申し出を断るはずもなく、 結局明日のホワイトデーは皆で雷也を迎えに行くことになってしまった。 「………」 「ま、まあ…落ち込むなよ、ハジメ;」 「そうだよ、斎藤君; 君と鬼部君が二人になれるよう俺たちも協力するし…。」 「別に…余計なことはしなくて良いです…。」 「「…………;」」 斎藤先輩が何も言わないのを良いことに、 いつの間にか決定してしまったホワイトデーの予定。 永倉先輩と近藤先輩がさり気にフォローした感触では、 斎藤先輩はあまり喜んではいない…というかむしろ迷惑そうで、 表情には出ないものの不機嫌なオーラに二人は言葉を失くしていた…。 *** そんなこんなで翌日。 「斎藤先輩!」 バス停に人影を見つけた愛花はその人物の名を呼んで駆け寄った。 バス停に居たのは斎藤先輩だった。 「おはようございます、斎藤先輩!」 「ああ、おはよう。愛花。」 愛花が笑顔で声をかけると、斎藤先輩も ふっと柔らかい表情で返事をしてくれた。 やっぱり朝から好きな人に会えるのはお互い嬉しいようだ。 「今日はありがとうございます。お兄ちゃんのために…。」 「いや、」 「お兄ちゃんにも連絡したら喜んでましたよ。 皆がわざわざ迎えに来てくれること。」 「…そうか。」 「はい!」 それでも、愛花の口から出るのは兄の話。 今日はそれが目的だし、当然なのだが、少し複雑な斎藤先輩。 せっかく休みの日に、こうして会えたのに…。 「あの…斎藤先輩?」 「何だ?」 二人バスを待っていると、愛花がおずおずと口を開いた。 「あの…先輩どうしてこのバス停にいるんですか…? 待ち合わせは空港で、先輩の家からだともう少し前のバス停の方が近いんじゃ…」 「ああ…」 不思議そうに尋ねる愛花に、 斎藤先輩は小さく相槌を打ち、さらりと答えた。 「ここで降りたからな。」 「え?」 「お前がちゃんと空港にいけるかわからないから、一応待っていたんだ。」 「……バスに乗るだけだから流石に迷子にはなりませんよ。空港は終点ですし…。」 淡々と返事をした斎藤先輩に、愛花は少し複雑そうな顔をした。 いくらなんでもそこまで頼りないと思われているのかと…。 複雑な顔で反論した愛花に、斎藤先輩はふっと笑うと、 「冗談だ。」と返した。 「?」 「同じバスに乗った方が、少しでもお前と一緒にいられるだろう…?」 「……………………!」 「せっかく休日に会えるんだ、少しでも長く…お前といたかった…。」 「………////」 そして真顔でとんでもないことを口にした。 愛花は理解に多少時間はかかったものの、 意味を理解すると真っ赤になって俯いた。 「……そんな風に思われるのは…迷惑か…?」 真っ赤になり、顔を隠すように俯いた愛花に、 斎藤先輩は不安そうに尋ね、愛花は慌てて顔を上げる。 「い、いえ!そんな! そんな…こと…ないです…けど…///」 それでもやはり恥ずかしいのか、 上手く返事をすることができず、言葉に詰まった。 そして、辛うじて首を振ったが言葉は続けられず また赤くなって俯いてしまった。 「…愛花…」 斎藤先輩はそんな愛花に優しく声をかけると、 落ち着かせるようにそっと頭を撫でた。 上手く返事はできなかったものの、赤くなっていた顔と、 懸命な動作に、一応愛花の気持ちには気づいてくれたらしい。 そして愛花も、優しい斎藤先輩の行動に、 何とか落ち着きを取り戻し、ポツリポツリと口を開いた。 「すみません…;///」 「いや…」 「あの…迷惑なんかじゃないですから…。」 「………」 「私も…できるなら…斎藤先輩ともっと一緒にいたいです…。 だから…今、先輩がわざわざ私のこと待っていてくれて…凄く嬉しいです…///」 「…そうか…よかった…。」 かなり小声ではあったが、愛花が口にした本心を聞いて、 斎藤先輩はそれは嬉しそうに微笑んだ。 愛花もまた、そんな斎藤先輩の顔を見て、安心したように、 照れ臭そうに笑い、ほっとした空気が二人の間に流れた。 と、そんな二人の幸せな空気をかき消すように、 バスが到着し、頭上から声がした。 「お~い、斎藤、鬼部!」 「愛花さん、おはよう♪」 「あ、原田先輩、藤堂先輩。」 「………」 窓から顔を出し、声をかけて来た二人は、 別段悪びれた様子もなく、明るく挨拶をしてきた。 もっとも、悪気はないのだから当然だが、 邪魔をされた斎藤先輩はかなり不機嫌になってしまい、 返事もそこそこに愛花の手を引っ張ってバスに乗り込んだ。 「おはよう、斎藤君、鬼部君。」 「おはようございます。」 「おはようございます。近藤先輩。」 一番前に座っていた近藤先輩に挨拶をすると、 斎藤先輩はその後ろの席の窓際に愛花を座らせ、 自分はその隣の通路側に座った。 「あ…あの;斎藤先輩…?」 何となく不機嫌な斎藤先輩の雰囲気に気づいた愛花は 少し焦ったが、何も言うことはできず大人しく座っているしかなかった。 「ねぇねぇ、愛花さん。」 そこへ藤堂先輩が声をかけて来た。 原田先輩と一緒に後ろの席へ移動してきたらしい。 「はい?」 「ちょっと気になってたんだけど…。」 愛花が答えると、藤堂先輩は少し言いよどんだが、 「何ですか?」 「愛花さん、どうしてハジメさんのこと名前で呼ばないの?」 と、唐突に尋ねた。 「………え?」 「ハジメさんは愛花さんのこと名前で呼んでるのに…。」 唐突な質問に驚く愛花を尻目に、原田先輩も同意し、続ける。 「そうだな。もう付き合ってんだし、名前で呼べば良いんじゃねぇ?」 「いつまでも『斎藤先輩』じゃ、俺たちと同じだし~。 別に呼び捨てじゃなくても、『ハジメ先輩』とか『ハジメさん』でも良いんじゃ?」 「はぁ…でも…;///」 二人の質問に愛花は真っ赤になってうろたえた。 そんな愛花の反応に気を良くしたのか、 「山崎みたいに『ハジメちゃんv』って呼ぶとか♪」 「そ、そんなの無理ですよ…;///」 「じゃあ~『ダーリンv』とか♪」 「と、藤堂先輩!」 段々と内容もエスカレートしていく…二人。 愛花が困って声を上げた時、黙って隣に座っていた斎藤先輩が動いた。 「さ……!?」 「いい加減にしてもらえますか…?藤堂、原田さん…。」 斎藤先輩は愛花を自分のもとに引き寄せ、 二人から隠すように抱きしめるとじろりと二人を睨んだ。 「あ~…ごめんね;ハジメさん?;」 「わりぃわりぃ;」 斎藤先輩に睨まれて、二人は大人しく席に着いた。 ただ… 「けど、ハジメさんだって名前で呼んで欲しいよね?」 藤堂先輩が最後にそういうと、斎藤先輩は少し複雑そうな顔をした。 やっぱり本心では名前で呼んで欲しいと思っているのか…。 「あの…斎藤先輩…?」 そのことに気づいた愛花が不安気に斎藤先輩を見上げて声をかけると、 斎藤先輩は少し考えていたようだが、そっと愛花を放して頭を撫でた。 「…確かに、できれば名前で呼んで欲しいが、無理にとは言わない。」 「………すみません…。」 「謝る必要はない。お前が呼べるようになるまで待つ。」 「……ありがとうございます。斎藤先輩…///」 「「…………」」 「見せ付けてくれちゃって…。」 「ま…もうしょうがねぇだろ…;」 かなり小声の二人の会話だったが、 皆には聞こえていたらしい。 藤堂先輩と原田先輩は呆れた様子で呟いたが、 近藤先輩はどこか満足そうに笑っていた。 中編へ 戻る 2008.03.10
今回は、前回のバレンタインに続き現代学園パラレルで。
と言うか、そのまま前回の続きのお話です。 なので、珍しく甘いです。 と言うか、ヒロインと相手が正式に付き合っていると言う設定なので。 今までに無いタイプのお話かもしれません。 とは言え私がそういう話があまり得意ではないので、 一般的に期待できるような甘い話ではないかもしれません;(汗) 最初にも激ギャグ注意!とありましたが、あれが事実です。 ここまででも充分ひどいですが、今後さらに酷いので、 キャラが壊れてるのが嫌!と言う方は見ないようにお願いしますm(__)m しかも長くなって三部作とは…ホント弁解の余地もありません;(土下座) |