「あ、さん!おはよう!」

ちゃん!アンタが遅れてどうするのよ!」


空港に着くと、先に着いていたらしい
鈴花さんと山崎先輩がに手を振り手招きした。
他にも土方先輩や沖田先輩、山南先輩も来ていた。





-White Day-中編




「すみません;遅れてしまって…;」

「いや、まだ時間には早い。お前が遅れた訳じゃない。」

「僕らがちょっと早く着すぎてしまっただけですよ。」

「永倉君や才谷さんはまだ来ていないしね。」


遅刻したことを謝るに先輩達はそう返事をし、
まだ来ていない二人を待つことにした。


が乗ってる飛行機は次の便かな?」


何気なく時刻表を眺めて立ち上がった近藤さんが、
隣に立っていたに尋ね、が確認のためにメモを調べていると…


「いや、もう着いたよ。」


と、突然すぐ隣から声がして、
近藤さんとは驚いてそっちを向いた。


「久しぶり。」

!」

「お兄ちゃん!」


そこには待っていたはずの人物が立っていて、
二人とも驚いたが、は気にした様子もなく、
持っていた荷物を下に降ろすと、代わりにを抱き上げた。


「ただいま、…。」

「……おかえりなさい…お兄ちゃん…。」


は愛おしそうにを見つめ、そう言うと、
も、ほっとしたように返事をし、に抱きついた。

手紙や電話は欠く事はなかったが、
やはり会う事のできない長い期間はどれだけ寂しかったことか…。


「………おかえり、。元気そうで安心したよ。」

「…ああ、ありがとう勇。」


そんな二人の様子をしばらく眺めていた近藤さんだったが、
二人の邪魔をしないように会話が終わった頃に声をかけ、
返事をしたとパチンと手をあわせた。



***



「わりぃ!遅れて…」

「すまんき、永倉さんが寝坊したせいでバスに乗り遅れたぜよ。」

「あ;ばらすなよ;梅さん;」


それからしばらくして、遅れていた二人も到着し、
全員揃うと、予定通り最寄のテーマパークに行くことになった。

せっかくの一日パーッと皆で遊んで過ごそう!

と言う安易な提案が採用されたためである…。

道すがら、と斎藤先輩の仲を何とかしたいと奮闘している山崎先輩が、
近藤さんと話をしているにさりげなく探りを入れてみることにした。

やはりこの二人の恋路には、この兄の存在が鬼門であるから…。


ちゃん

「何か…?山崎君?」

「留学生活はどう?いい人はいた?」

「え?…ああ、皆良い人ばかりだよ。親切で。」

「違うわよ!そういうことじゃなくて!」

「?」


…相変わらず…兄妹揃ってやはりその辺のことには鈍いらしい…。


「彼女とかはできてないのか?って聞いてるの!」

「ああ…そういうことか。」


仕方なく直球で聞いた問いに、
はようやく山崎先輩の言わんとしたことを理解した。


「外国なら金髪ブロンドの美人とかいるんじゃねぇの?」

「モデルばりの美女とか…!」


続いて、永倉先輩や原田先輩も興味を示したが、
残念ながら当のは全く興味ないと言った様子で、


「さあな。」


と、短く答えただけだった。


「大体、彼女ができてたら連れてきてるよ。」

「まあ、確かにそうだね。」

「生憎俺は、今はその辺のことに興味はないね。」

「相変わらずだね〜は。」

さんは恋人欲しいとか思わないんですか?」

「ああ…今は別に。」

「…じゃあ、ちゃんに恋人ができたら…?」


何とか自然な流れになってきた所で、
山崎先輩が聞きたかったことをさりげなく尋ねた。


「…………」


一瞬辺りの空気が凍りついた気がする…。
さりげなく尋ねたつもりだったのに…。


ちゃん…?」


恐る恐る山崎先輩が名を呼ぶと、
はふっと爽やかな笑顔になり、


「……何?もしかして俺の留守中に誰かに手出したのか?」


と、一言。


「「「「「「…………………………」」」」」」


あまりにさりげなく返された返事と、
爽やかな笑顔に、一瞬理解の遅れたメンバーだったが、
真意に気づくと、皆全力で首を振った。


そ、そんなことあるはずないじゃないですか!ねぇ?永倉さん!

「そ、そうだぜ!ありえねぇよ!な、なぁ、左之?」

お、おうよ!な、平助?」

「そ、そうだよね〜!」

「そうか。」

「「おう!」」「「うん!」」



怖い…怖すぎる…。



これはかなり根気の要る作業になりそうだと、
山崎先輩は冷や汗をかきながら溜息を洩らした。


と、一同がそんな凍りつく会話をしていた時、
と斎藤先輩は、後ろ、皆から少し離れて歩いていた。

談笑している二人をも気にはとめたが、
別段いつもと変わりはない二人の様子に、
特に気にする素振りは見せなかった。



***



「わぁ〜結構混んでますね〜。」

「まあ、今日はねぇ〜。」


到着したテーマパークでの第一声はそれだった。
確かに中々の盛況ぶりだ。
今日はホワイトデーだし、カップルのお客も多いのだろうか。


「気をつけねぇとすぐはぐれちまうんじゃねぇか…?」

「そうだね…。」

「じゃあ、鈴花さんわしと迷子になってしまうかの?」

「どういう意味ですか、そういうのは迷子とは言いません。」

(はっ!これはチャンスじゃないかしら…!)


そんな会場の様子を見て何やら騒いでいる面々、
と、そこでまた何か企んだのは山崎先輩。


「ハジメちゃん!」

「わっ!」


斎藤先輩を引っ掴むと、皆から少し離れて耳打ちした。


「ハジメちゃん!ハジメちゃん!」

「何ですか?」

「今のうちにちゃんを連れてはぐれちゃいなさいよ!」

「……は?」


そして言い出したのはまたとんでもない事。
斎藤先輩は呆れるしかない。


「は?じゃないわよ。チャンスじゃない!」

「…そんなことできません。」

「どうして?」

さんに会えたこと…は喜んでいるのに…。」

「それは…そうだけど…ハジメちゃん悔しくないの?」

「…もう…今日は仕方ないでしょう…。」


山崎先輩は納得しかねる顔をしていたが、
斎藤先輩の言い分は正論だし、自分の気持ちより
の気持ちを 優先させる斎藤先輩の優しさに、最後は納得した。


「……も〜ハジメちゃんったらしょうがないわねぇ…。」

「すみません…。」

「…良いのよ、ハジメちゃんらしいわ。
 ちゃんは…ハジメちゃんのそういう所が好きなのよね。」


残念に思ったのは事実だが、きっとそれが答えだと思うから。

天然で鈍い二人にヤキモキはするが、
こうしてお互い思い合えるなら心配はないのかもしれない…。
山崎先輩は少し考えを改めたのだった。


「…って…あら?」

「どうしました?」

「ご、ごめ〜ん。ハジメちゃん;」

「?」

「……はぐれちゃったみたいだわ…;」

「山崎さん……」

ご、ごめん!ホントごめんね〜!」



***



「あれ?」

「どうした、勇?」

「斎藤君と山崎は?」

「永倉と原田と藤堂はどうした。」

「山南さんもいませんね。」

「鈴花さんと才谷さんも…?」

「何だよ…みんなはぐれ過ぎだろ…;」


気づくとすっかり人数が減っていて、
皆苦笑いして顔を見合わせた。


「まあ…斎藤君と山崎なら心配ないかなぁ…。」

「桜庭さんと才谷さんはきっと一緒でしょう。」

「あの3人は多分山南さんがお守りしてくれてるんじゃないか?」

「まあ…皆それぞれ見たい所があったのかもしれませんね…。」

「…まったく…仕方ないな。
 それならそうと一言言っていけば良いものを…。」


とりあえずその場に残っているのは、
、近藤さん、土方さん、沖田先輩の5人。

不用意に場を離れた面々に土方さんが不服を漏らすと、
沖田先輩が笑って土方さんに声をかけた。


「なら、僕ちょっと行ってみたい所があるんですけど。」

「ん?ああ、わかった。」

「土方さんも一緒に行きましょう。
 ホントはさんと一緒に行きたいですけど、
 斎藤さんが怖いので土方さんで我慢します。」

「総司…」

「冗談ですよ♪
 じゃあ、近藤さん、さん、さん。また後で!」


沖田さんは楽しそうに土方さんを引っ張っていった。


「何処へ行くんだ?」

「お化け屋敷です。」

「………お化け屋敷!?」

「土方さん怖いんですか?」

「何を馬鹿なこと…怖いわけがあるか。」

「なら良いですよね。僕見てみたかったんです♪」

「………;」



***



「はぁ〜何か気づいたら随分減っちゃったね。」

「そうですねぇ…。」

「まあ、流石にあの大人数じゃ収拾つきにくいしまあ良いけど。」

「まあね〜。」


結局3人になってしまった、近藤さんは、
特にアトラクションには乗らずにブラブラと歩いていた。


「斎藤先輩は山崎先輩と一緒なんでしょうか…。」

「そうだと思うよ。何か話してたみたいだし。…気になる?」

「え?あ、いえ;大丈夫かと思って…。」

「大丈夫だろ、あの二人なら。
 ってか、俺腹減ったから何か買ってくる。ちょっと待ってて。」

「あ、それなら私が…。」

「いや、良いよ。何かいるものあるか?」

「私は別に大丈夫です。」

「勇は?」

「ああ、俺は…なんか適当でいいよ。が選んだもんで。」

「了解。」


はそう言うと二人を残し、売店の方へ歩いていった。
と近藤さんは少し先のベンチに腰を下ろしてを待つことにした。

思いがけずと二人になった近藤さんは少し迷っていたが、
に声をかけた。


「あのさ、君。」

「はい。何ですか?」

君さ、に斎藤君と付き合ってること言った?」

「あ……いえ…まだです…。」

「……言ってないのか…。」

「はい…。」


気まずそうに俯いたに近藤さんは苦笑い。
そうだろうとは思っていたが…。


「どうして言ってないんだい?」

「…えっと…やっぱりちょっと恥ずかしくて…///

「う〜ん…。」

「それに…まだいまいち付き合っているというのがわからなくて…。」

「え?」

「付き合うと言うのがどういうことかもわかりませんし…。
 別に今までと変わりない気もしますから…。お話しする機会は増えましたけど…。」

「う〜ん…。」


ぽつりぽつりと話すの話に耳を傾け、
近藤さんは少し困惑した。

二人は上手くいったのかと思っていたが、少し微妙な関係なのか…。
上手くいっていないわけではないようだが…。

山崎先輩の言っていたことに同意するわけではないが、
確かにどうも普通のカップルとは違うのかもしれない。

とは言え、こういうことは他人が口出しすべきではないし…。


「まあ…少しずつで良いんじゃないかな。
 君は斎藤君に遠慮しすぎじゃないかな?」

「遠慮ですか…?」

「もう少し…まあ…難しいかもしれないけど。」

「はぁ…。」

「ま、でも、君は斎藤君のことが好きだよね?」

「え…はぁ…///えっと…///

「なら大丈夫だよ。きっとそのうち自然と付き合えるようになるよ。」

「……はい…ありがとうございます。近藤さん。」

「まあでも、には近いうちに言った方がいいかもね。」

「はい。そうですね。お兄ちゃんに隠し事(?)してるのは…。」

「まあ…頃合を見ないと大変そうだから…そのうちに…。」

「?」


はまだまだ恋愛初心者なのかもしれない。
だが、無理する必要もないし、こういうものは自然に任せるに限る。
近藤さんはできる限りのアドバイスをして、話を終わらせた。


「お〜い。買って来たぞ。」

「あ、お兄ちゃん。」


すると丁度よくが戻ってきた。
と近藤さんにそれぞれ買ってきたものを渡すと、
携帯電話を取り出し、何か確認した。


「ゲーセンにいるって。」

「「え?」」

「永倉君たち。山南さんが連絡入れてくれた。
 白熱してて収拾つかないから来て欲しいってさ。」

「あ〜…なんか分かる気がする;」

「他の人にも連絡したみたいだから、そこで合流しよう。」

「はい。」


とりあえず食事を済ませると、
3人は連絡を貰ったゲームセンターに向かった。






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2008.03.12