雪の花-壱
-はじまりは突然に- 「きゃ!?」 屋敷の前で突然飛び出してきた女にぶつかった。 「ごめんなさい、ごめんなさい。」 女は倒れて膝をついたが、俺を見ると そのままの体勢で頭を下げて謝った。 「大丈夫ですか?」 銀が女に手を貸してやっている。 女は戸惑った顔で俺と銀を交互に見たが、 「ごめんなさい、ありがとうございます…」 おずおずと銀の手に捕まろうとした。 「どこ行きやがった!?」 その時、ガラの悪い声がし、女がビクッと反応した。 銀の手を離すと、オロオロしつつその場を去ろうとした。 「銀」 「はい、泰衡様」 「え?あ、あの?」 「心配いりませんよ。追われているのでしょう? ここは私たちに任せて下さい。」 銀は女を宥めると抱えあげ屋敷の中につれて行った。 別に女を助ける気はなかったが、屋敷の前で 騒がれるのも腹立たしいのでとりあえず匿った。 案の定、見るからにガラの悪そうな連中がやってきた。 「いないぞ?」 「そこらへんに隠れてるんじゃないか?あのガキ。」 やはりあの女を探しているようだ。 いったい何をやったんだか…。 「おい、おまえ女を見なかったか?」 連中の一人がやってきて、俺に尋ねた。 「背の低いガキだ。」 「知らんな。」 「おいおい、兄ちゃん。 知らないってことはないだろう? こっちへは来たんだ見てるはずだぜ?」 「知らんと言っている。 まあ、知っていても貴様らに教える気はないがな。」 「なんだと!?」 「なんだ?」 「口の聞き方には気を付けた方が身のためだぞ?」 「…それは貴様たちの方だと思うがな…。」 「どういう…」 「泰衡様。」 男たちが苛立ち始めた時、銀が戻ってきた。 「泰衡…?」 「!?」 男の一人が驚いた顔をした。 「おい、やめた方がいい…もう行こうぜ」 「なんだ?馬鹿にされて黙ってるのか!?」 男たちが揉めだした。 「どうした?」 俺が聞くと、前に出ていたを男をひっぱって 行ってこそこそと何か耳打ちしている。 大方俺が藤原の総領だということを教えているのだろう。 男が顔色を変えた。 「くっ、…邪魔したな!」 男たちは捨て台詞を吐くと去っていった。 「…あ、あの」 銀の後ろから女が顔を出した。 「なんだ、隠れていたのではないのか。」 俺が声をかけると女は怯えたように 見えたが頭を下げて礼を言った。 「ありがとうございました。」 「ふん、別に貴様を助けたわけじゃない。 屋敷の前でもめ事を起こされるのは迷惑だ。」 「はい、すみません。ご迷惑をおかけしました。」 女は深々と頭を下げた。 「貴様、なにをしたんだ?」 「え?」 「追われるようなことをしたのか?」 「え゛、え〜と…。」 俺の問いに女は動揺し、オロオロと視線を泳がせた。 その表情を見ているとまだ幼さの残るような顔だ。 まさか罪人でもあるまい、詮索するのはやめた。 「ふっ、まあいい。」 俺がそういうと女は明らかにほっとしたような顔をした。 「銀」 「はい、泰衡様。」 「この女を送ってやれ。」 「えっ」 女は驚いて俺をみた。 「なんだ?何か不都合があるのか?」 「い、いえ、あの!助けて頂いた上にそこまでして頂くわけには!」 女はぶんぶんと激しく首を振った。 「ふん、このまま行ったら またさっきの連中に見つかるのではないか?」 「でも…大丈夫ですから。」 女は不安そうな顔になったが、 それでも頑として首を縦に振ろうとはしなかった。 「遠慮なさらないで、貴女のような可愛らしい お嬢さんが、危険な目にあっては大変ですから。」 銀が優しく言った。 「!?…///」 女は真っ赤になって俯いたが。 それでも、首を横に振った。 「…そんなに俺が信用できないか?」 いつまでたっても拒否する姿勢に苛立ち、 少しきつい言い方になってしまった。 すると女は思いっきり首を振って、 「いえ!とんでもありません! 本当に感謝しています!!」 真っすぐ俺の顔を見て言った。 真剣な女の顔に圧倒され、真っすぐな瞳に 苛立っていた気持ちも消えた。 「では、何故だ?」 それでも納得はできず、尋ねると。 女は悲しそうな表情になり、ぽそっと呟いた。 「?何だと?」 「…ないんです。」 「え?」 「家はないんです。」 悲しそうな顔で下を向いていた女は 苦笑いのような表情で顔をあげた。 さきの悲しそうな表情、今の苦笑いも、 無理したような笑いで、心苦しい気持ちになった。 この女にこんな顔をさせたことで、 何故こんな気持ちになるのかわからないが、 無理矢理聞き出したことに申し訳ない気さえした。 そんなモヤモヤした気持ちの中、 俺は自分でも信じられないようなことを口にしていた。 「ならば、この屋敷で働くか?」 Top Next 2006.10.10
第一話です。
なんか中途半端な終わり方になってしまったかもしれません…(^ ^; 出会ったばかりの主人公。 なぜ追われていたのか?なぜ帰る家がないのか? など、謎は多いですが、今後明らかになる?(予定・笑) それと謝らなければならないのは…。 主人公名前が出てきてません!!(゜ロ)!名前変換の意味なし! ごめんなさい…二話目からはちゃんと出ますから!(>m<) でわでわ、こんなところまで読んでくださった方。 ありがとうございます!(^-^)/ |