泰衝さまは氷のようだとみんなが言うんです。



でも、私は…

冬のようだと思います。



◇雪華◇-泰衡様side-



「とさんが言っておりましたよ。」

奥州の長くはない夏もすぎ、秋の気配が忍び込む頃、銀が思い出したようにあいつの話を始めた。


だからどうというわけではないのだが、皆のいう氷とのいう冬が俺には同じにしか思えなくて、

「それは同じような意味合いだろう。
 どちらにせよ、俺に対し冷たい印象を持っているということだろうしな。」


銀は、含んだ笑みを浮かべて、

「そう、でしょうか。彼女は泰衝さまを慕っておりますし、おそらく冷たいというだけの意味ではありますまい。」



銀の返事は、まるで答えを知っているかのようで。

「お前は聞いたのか?」

「いいえ。気になられるのであれば、直接お聞きになってみてはいかがですか?
 泰衝さまがお声をかければ彼女も喜びますよ。」


そう答えるのみで全く教える気などないらしい。



「…もういい、下がれ。」

「はい。」


銀は穏やかな笑みのまま、立ち去っていく。





「まったく…」

くえない奴だと思う一方で、真意を知りたいと思う自分もいる。



「冬か…」


この奥州にあって冬は厳しいもの、あいつの、の俺に対する印象もまた厳しいというものなのだろうか。



「だから、どうだと…」



一人つぶやいても、何かがひっかかる。









「あ、泰衝さま。」

気分を変えようと、庭にでたところで後ろからあいつの声がして。


振り返ると走って来たのだろう、少し赤い顔をしたがいた。




「あのっ…」

まだ、息も整わないのに俺に必死な目を向けて何かを訴えている。



「落ち着け。」

「でもっ」

「俺に用なのだろう。別に逃げたりはせん。」



そう言い聞かせてやっと落ち着いたのか、息を整え始める。




「あの…銀さんから私が言ったこと、泰衝さまがお知りになったって聞いて、それで…」

はまだ赤い顔をして必死だ。


「ああ。俺を冬だと評したと、聞いた。」

気になりは…しない…が


「あのっ、冬というのは…」

「生き物に厳しい季節、だろう。」


俺の言葉には目を丸くし、そして思い切るように、言葉をつむぎはじめた。




「確かに、冬は生き物にとって厳しい季節です。
 でも…それだけじゃないと思うんです。
 次の春を迎えるためにみんなに休息の時間を与えてもいます。」

俺の憮然とした態度に、ちらちらとこちらを見ながら話す。だけどその言葉は途絶えることもなく。

「なのに、厳しいだけと誤解されることも多くて…」


まるで自分のことのように悔しがるに、つい体が動いて。





気がつくと、の腕をとり、頭をだきしめていた。



なぜそうしたのかなど、自分でもわからない。

ただ、された本人はというと、腕の中で固まってしまっている。



「あくまでも俺に対する見方だからな。
 だが、自分のことのように悔しがってくれるのは…嬉しかった。」


そこまでいうと腕をほどき、

「お前はそろそろ戻れ。」

「はいっ///

はうつむいたまま、ペコリと頭を下げ走り去っていく。


どうしてだろうか、あれほど自身の気持ちを他人にさらすなど、今までなかったはず。

俺の心情など…わかってもらわずともとすら思っていたはずだったのに。



なぜあいつには、伝えてしまったのだ。




だが…

「もうじき…戦になる。そうすれば…」



それは、戦の足音が遠くに聞こえ始めたころ。






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「掌中の珠」、高杉沙月様より頂きました!
今回は遙かドリーム。しかもこちらも当サイトドリ主を使って下さいました!
もう本当に本当に嬉しいです〜!!ありがとうございます!

泰衡様、もう最高にかっこいいですね!(笑)
もう一つの方はドリ主の視点のお話ですので、そちらもご覧下さいませ♪


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