一瞬、なにが起きたのかわからなかった。 私はただ… 泰衝さまが誤解されることが悔しいと思っただけ。 なのに気がつくと私は、暖かな腕の中にいた。 ◇雪華◇-side- 「失礼します。」 泰衝さまの顔などとてもみられなくて、頭を下げたまま小走りに、戻る。 きっと、泰衝さまには何かあってのことなんだ、そう自分に言い聞かせても、 顔の火照りは消えなくて、うつむいたまま先ほどの続きで庭掃除をはじめる。 でも、どうして… 泰衝さまの真意はわからなくても、嫌われてされたことではない、それはわかる。 「だけど、他意なんてないよね」 自分の分くらいはわかっているつもりだから。 「他意、ですか?」 「きゃっ!」 突然後ろからかかる声に驚いて振り向くと、銀さんがにっこりと微笑んでいる。 「銀さんでしたか。びっくりしました〜」 「すみません。あまりにもさんが可愛らしかったので」 にっこりと笑う銀さんは、私でなくとも十分魅力的で。 「どうされたのですか?先ほどからひどくお悩みのようでしたが。」 そこで、先ほど泰衝さまにお会いしたことを話した。 ただ…抱きしめられたことは言えなかったけど。 「そうでしたか。でも、泰衝さまはさんがそれほど思っているのが嬉しいと、そう思われたのではないでしょうか。」 「嬉しい、ですか?」 「ええ、自分を慕ってくれるというのは、それだけで十分に値することですから」 銀さんの穏やかな声は、動転していた私を落ち着かせるのに十分で。 「私…だけじゃないです。皆さん、氷のようだと言っている人達も、泰衝さまを大事に思ってますし…」 私の懸命さにびっくりされたのか、銀さんは一瞬目を丸くすると、 くすっと笑って、 「そう、ですね。皆泰衝さまを慕っている。 だからこそあの方は、氷のようと言われても役目を果たそうとなさるのですから。」 もちろん、私も大切に思っておりますし、と銀さんは笑う。 「そう、ですね。」 あの方は、自分の事より皆の幸せのために努力される方。 だからこそ、皆から慕われているのだから。 「私、仕事に戻ります。話聞いてくださってありがとうございました。」 「頑張るのもいいですが無理なさらないでください。」 「はい、ありがとうございます。」 「だけど…泰衝さまは、あなただったからあれほど感情を出されたんですよ。」 立ち去った後、呟かれた言葉は誰も聞くものなどいなかったけれど。 それは、ずっと見てきた彼だからこその呟き。 ただ…幸せを祈る事くらいは許される、そうも思われた。 このような時期だから…こそ。 ---------------------------------------------------------- 泰衡様sideの続きで、こちらはドリ主sideです! ドリ主の心境、銀の気持ちなど、見所いっぱいです! 泰衡様やドリ主を心配して気遣う銀も素敵ですよねv 高杉沙月様このたびは本当にありがとうございました!
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