『突撃☆練習日和?!一瞬先は、地獄日和?』泰衡+ちゃん編




【 小野寺家 ―ガレージ― 車の車内 】



『何故、俺達がここに居ねばならん?しかもこの狭い部屋は何だ!!』


いきなり知らない世界に跳び、訳も分からず車に乗せられたら、
異世界の住人ならこう言ってしまうのだろう。


「泰衡様、落ち着いて下さい。」


泰衡とは違い、は落ち着いて泰衡を宥めていた。
京香は泰衡の発言を聞くと、眉をひそめ顔色が悪くなった。

そして助手席に座る泰衡に気の毒そうな顔を向け、こんな事を言うのだ。


「はぁ〜……嫌ねぇ〜、煩く喚く男って…。
 しかも、これが奥州藤原の御曹司ときてるから……はぁ〜領民も可哀想に…。」


京香に、そんな普通の疑問が通用する訳が無かった。
何せ自世界の泰衡とは犬猿の仲なのだし、こちらの泰衡にもあまり良い印象を持てて居なかったからだ。
だから…この機会を逃す筈も無く、ここぞの機会とばかりに泰衡を痛めつける予定だった。


「お前にそこまで言われる筋合いなど無い!!!俺とを早く元の世界へ帰せ!」

ちゃんを見習いなさいよ!!落ち着いてるじゃない!
 良い年した大人が、慌てふためくなんて見っとも無いわよ!!」


そう言って諫めるが、京香の顔はどこか楽しげだった。


「ふふふ…でも帰るたって、白龍はあなたの頼みなんて聞いてくれはしないわよ!」

「!!何故だ!」

「だって、のんちゃん至上主義だし…。その、のんちゃんを脅してでも私はアンタを困らせたいもの!!」

「それでは帰れないではないか!!」

「ええ、そうね!あぁ……でもちゃんは大丈夫よ!いつでもお姉さんが帰してあげるから。
 帰りたくなったらすぐに言ってね!」


泰衡の目に前には、満面の笑みを浮かべた悪魔が居た。


「えっと、京香さんありがとうございます。
 でも、でも泰衡様がいらっしゃらないと平泉の皆さんが困ってしまいますので、どうか泰衡様をお帰し下さい!!」

「も〜う!!ちゃんてばホントいい子ね!泰衡さんにはもったいない!!
 ウソよウソ!!二人共ちゃんと帰してあげるから、少しだけ手伝ってよ。」

「はい、京香さん。」

「……本当だな?本当に帰すんだろうな。」


疑いの目を向けてしまうのは、仕方が無いだろう。泰衡はビクビクしながら京香を見た。


「大丈夫よ〜。平泉に帰してあげるから安心しなさい。」

「それで、何をすればよい。」


帰る為には、どうやら何かをしなければならないようなので、手っ取り早く帰る為に用件を聞いた。


「お母さんからお使い頼まれてるんだけど、あいにくとウチの荷物持ちは手が離せない用事があって…。
 だから、あなたは荷物持ち!ちゃんは一緒に食材でも選びましょうね!!」

「はぁ〜…やればいいのだろう……??
 ……(何故、この俺が荷物など持たなければならん。荷物など銀に持たせればいいだろう。)」

「何??やりたくないの?!」

「………やらせて頂こう……(覚えて居ろよ!このアマ!!!)」

「あの…京香さん。主が荷物を持っているのに、私が荷物を持たないなんて出来ません!」


は主の泰衡に荷物を持たせようとする京香を、何とか止めようと頑張ってみた。


ちゃん、想像してみて。男性が一人居たとするでしょ?そこには一緒に女性が二人居ます。
 重ーい荷物があったら、流れ的にはその荷物…男の人が持つのが一般的よね?」

「…そっちの方が、一般的ではありますよね。」

「でしょ?」


京香は、の返答を聞き微笑んだ。そして目線を泰衡へと合わせた。


「だからちゃんのカッコイイ主様は、快く荷物持ちをなさって下さいますよ?…ねぇ?」

「……あぁ。(コイツ、を味方につけやがったな!)」


泰衡をで丸め込んだ京香は、車のキーを回しエンジンをかける。
横を見れば、明らかに動転している泰衡が居た。


「何なんだ、これは?」

「泰衡様!…さっきまで普通だったのに、急に動き出しましたね。」


も初めて乗る不思議な物に、驚いたようだ。


「車と言って…そうねぇ〜。……馬より速く駆ける鉄の塊よ。」

「そんな物を野晒しにしておいて……危険は無いのか?」

「無いわよ〜!!でも……あぁ〜……(交通事故とか多いものねぇ〜。危険と言えば危険よね。)」

「……(『あぁ〜』に続く言葉は何なんだ?)……。そんな危ない物に俺達を乗せるのか?!」


京香が中途半端なところで会話を止めた為、泰衡は余計に不安になった。


「まっ、いっか。行きましょ!」

「……あぁ。」


ガレージから車を発進させ、小野寺家から車道へと車をゆっくりと出してゆく。



家から車道へと出て、僅かな距離を進んだ。


「……(何だ。馬より速くなど駆けぬではないか。これだけ俺を脅しやがって…。)……。」

「……(動き出しましたね。思っていたより安全なのかもしれませんね!)……。」


二人がそんな事を考えていたのは、束の間のひと時でしかなかった。



― ガガガガ  グオー ―



「!!!!!!!!」


車は凄い勢いで、車道を駆け抜けていった。




買い物が済むと、二人を乗せた車は何処にも寄ることなく、一目散に小野寺家へと戻って来た。

「お前は、俺達を殺す気かッ?!」

「えぇ〜、そんな事無いわよ〜。いつもはもっと運転うまいのになぁ〜……………チッ。」


笑顔だった京香の顔が、横を向いたた瞬間に苦虫を潰した様に歪み、舌打ちを打った。


「!!!!!!『チッ』っと言っただろう!このアマ!やはり殺す気だったのだな?!!」


そんなこんなで、車内では三十分近く白熱した討論をしていたそうだ。


「あ!ちゃんは大丈夫?気分とか悪くは無い??」


京香の横には白熱した討論の末、敗れた泰衡が居た。
見たところ、京香との討論(と言う名の口喧嘩)に負け、項垂れている様だ。


「いえ!!京香さんの運転は素敵でした!!」

「「え?!(アレのどこがだ!!)」」


そこには、京香の運転に目をキラキラとさせたと、驚いた顔をした二人に分かれてしまった。


、目を覚ますんだ!!あんな酷い馬捌きなど、褒めているんじゃない!!」

「いや〜……(怒られた事、呆れられた事は沢山あるけど…流石に褒められた事は…無いわよね?)」


果たして最強なのは、誰なのか?





* おまけ *


京香はをつれて、お菓子売り場に来ていた。


ちゃん、何か食べてみたいお菓子とかない?
 向こうでは絶対味わう事が出来ないお菓子とかいっぱいあるから、こっちに来た記念に食べてみない?」

「えぇ?そんな…勿体無いので結構です。」


は、折角の申し出だったが、申し訳なさそうに断った。


「そんな事言わずにね?折角だから食べてみよう?…ね?」

「私なんかが…いいんですか?」

「いいのいいの!何が食べたい?……って、分かる筈が無いか。
 うーん…どんな感じのが食べてみたい?」

「そうですね…甘いものがいいでしょうか?」

「…甘いものね〜。甘いもの……。」


お菓子売り場に甘いものは沢山あったので京香は何がいいかと悩んでいた。


「あ!!コレなんかいいかもしれません。」

「え?…何?」


振り向いての手を見ると、お菓子売り場で小さな頃から見慣れた赤いお菓子があった。


「ビッ?!『ビ○コ』!!?……コレでいいのね?」

「はい!……何だか美味そうに見えるので…ダメでしょうか?」

「いえ……いいのよ。ちょっと最近起こった事と同じ様なことが起こって…少し動揺しちゃてね…。

 (この子、こないだの知盛と同じなのね。異世界人にビ○コは、大人気商品なのかしら?
 って事は、うちに居る八葉もスキ…?)」





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「氷重」 副管理人の李碧玉様より頂きました!なんとコラボ小説第2弾です!
碧玉様の所で書かれているお話を元に、当サイトドリ主登場バージョンも書いて下さったのです!

ありがとうございますーー!!いや、もう大感激です!!

現代ネタで非常に面白いお話ありがとう御座いました!
泰衡様には少しお気の毒ではありましたが…まあたまには…(おい;)
京香さんと泰衡様の関係も非常に面白くて好きですので♪

しかし、この車ネタは面白かったです!
実は私も書かせて頂きたいと密かに思っているのですが…いつになるやら;(爆)

碧玉様!京香さん!本当にありがとうございました!


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