□初雪□ 雪…か。 初雪だな。 は今… この雪を見ているんだろうか。 旅籠に仲居として潜入している。 俺は反対だったのだが、近藤さんが決めた事だから俺に止める事は出来ない。 見回りの度に旅籠の様子を見に行っているが、姿を見られる事もなかった…。 『斎藤さん。』 耳に残る少し低い落ち着いた声。 何事もなく戻って来てくれ。 サクッ…サクッ… 雪を踏みしめる音。 誰だ? 夜明け前に。 「はぁ…はぁ…」 荒い息遣い。 ガタンッ!! 門から大きな音。 「さん!!」 ―!! だと? 雪を眺めていた自室から音のした門へと向かうと、門番が血塗れのを抱えていた。 「!!」 「斎藤さん!」 「俺が部屋へ運ぶ。お前は近藤さんと土方さんに知らせてくれ。」 「はっ、はい!!」 門番からを受け取る。 「、大丈夫か? !!」 「さい…と…さん…。」 意識はある。 「斬られたか?」 「…少し…すみませ…ヘマを…。」 「部屋に連れて行くぞ。」 「は…ぃ…。」 を抱き上げ部屋へ連れて行くと、山南さんが湯を持って来ていた。 「これで返り血を拭いて傷を探そう。 もうすぐ、医者も来る。」 「はい。」 布団に寝かせ、着物を脱がせる。 「いっ…。」 「何処を斬られた?」 「…左…肩…。」 「そこだけか?」 「他は…返り血…っ!!」 「もぅ、大丈夫だから。 斎藤くん、左肩の止血を。」 「あぁ。」 手拭いを裂き、止血をした所で医者が来た。 部屋から出ようとしたら、が怪我をしている左手が俺の着物を掴んでいた。 「側に…。」 「だが…。」 「いや、居てやってくれ。 治療の手伝いをしてくれないか。」 「はい。」 手伝うといっても、治療中にの手を握っているだけだった。 傷の消毒が痛むのか、ギュッと握り返し、必死で耐えていたが、傷を縫い始めた時… 「煤I!!」 「!」 「気ぃ失っただけだ。 良くここまで耐えたなぁ。」 …。 治療が終わってからも俺は手を握っていた。 空いた方の手で額に張り付いている髪を整えてやる。 この細い腕で…身体で… 現場を見てきた永倉さんの話だと、潜入先に聴衆の人間が泊まり、殺害命令が出たため、懐剣で戦ったそうだ。 よく… この程度の怪我で戻ってきたな。 さすがというか… それ以上に戻ってきてくれて良かった。 「んっ…。」 気がついた? 「。」 「…斎藤さん。 すみません、我儘を言って…。」 「お前の我儘なら、いくらでも聞いてやる。」 「ありがとう…ございます。」 「痛むか?」 「大丈夫です…。」 「良かった。」 頬が緩む。 本当に良かった。 俺に力があれば… この作戦を止められた。 護れたのに。 「斎藤さん。障子…開けてくれませんか?」 「あ?あぁ。」 の手を掴んだまま、障子を開けると雪が静かに降り続いていた。 「初雪… 斎藤さんと一緒に見たかった。 間に合った。」 も俺と同じだったのか? 俺と共に見たいと思っていたのか? 「お前が望むなら… 雪だろうが桜だろうが、共に見る。」 「なら… ずっと側に…居なくてはなりませんね。」 「あぁ。 側に居ろ。 俺の護れる範囲に、ずっとだ。」 「…斎藤…さん…。」 繋いだ手に力を込める。 「お前の事が好きだ。」 「…斎藤さん… 私は…私の手は… 血で染まりすぎています…。 あなたの側に居る資格など…。」 「資格など、不要だ。 だというだけで、いいんだ。」 「…はい…。」 そう言うとは静かに瞳を閉じ、涙を流した。 その涙を拭い、の唇に自分のを重ねた。 「お前の涙は綺麗だな。」 「…。」 「好きだ、。」 「私も…好きです。ずっと…ずっと側にいてもいいですか?」 「あぁ。」 俺がずっと護るから。 来年もその先も… 共に初雪を見よう。 −end− ---------------------------------------------------------- 「†Paraphrenie†」 佐具羅 蒼月様にリクエストさせて頂きました小説です。 とっても素敵で感動しました〜! 雪が大好きな私にはすっごく嬉しい内容でしたし!斎藤さん素敵ですvv 名前は私(管理人)の名前を入れてくださっていたのですが、 未入力の場合は当サイトドリ主の名前になるように変更させて頂きました。 せっかくなので読まれる方は是非入力してくださいね〜♪ でわでわ!蒼月様!ありがとうございました!
|