-山崎さん編-



お昼を食べ終えて、教室に戻ろうとしたお昼休み。
鈴花さんと廊下を歩いていたら、呼び止められて、
返事をする間もなく傍の教室に連れ込まれた。


ふぁ!?

わぁ!?ちょっと山崎さん!!」


突然すぎて、素早すぎて、
私は誰が呼んだのかまで理解するのに遅れてしまったけど、
鈴花さんは気付いてすぐに相手に抗議した。

その声に私も振り向いて相手を見ると、確かに山崎先輩だった。


「いやだ、鈴花ちゃん落ち着いてvそんな怒らないでよ〜♪」


相変わらずのいつもの山崎先輩だった。


「別に怒ってるわけじゃありませんけど…びっくりするじゃないですか、いきなり…。」

「ごめん、ごめん。」


とは言え、少し不機嫌になってしまった鈴花さんに山崎先輩は素直に手を合わせて謝った。

…かと思えば…。


「でも、ダメよ〜女の子がそんなプリプリ怒っちゃv皺が増えちゃうわよ。」

「なっ!?」

ちゃんは大人しくしてるじゃない。」

「あ、さんはびっくりし過ぎて言葉もないだけですよ!」


……ええ、その通りです…。


「あら〜、そうなの〜?ごめんなさいね、ちゃんも。」

「……いえ…;」


やっぱり山崎先輩は山崎先輩のようです…。


「それで…山崎さん私たちに何の用ですか?」


何だか納得しかねている様子の鈴花さんだったけど、
これ以上言っても話が進まないと判断したのか、
盛大なため息をついて山崎先輩に話を即した。


「あ、そうそうこんなことしてる場合じゃなかったわ。お昼休み短いんだから。」

「「…………」」


山崎先輩はそういうと、ごそごそと何か取り出した。


「じゃ〜ん!」

「「……?」」


何やら自慢げに取り出した山崎先輩だけど…
いまいち何かピンと来ない私たちは目を丸くして眺めているだけで…。


「……何よ、その薄い反応は…。」


山崎先輩はムッとした様子で私たちを睨んだ。


「え;あ、すみません…。えっと…それが何かわからなくて…。」

「突然すぎなんですよ!山崎さんは!」


理解が全然追い付かないのは悪いと思うけど、
全てがいきなり過ぎだから、睨まれるのは不本意だと私たちは抗議し、
ようやく山崎先輩は細かい説明をしてくれた。


「これね、今日発売のコスメグッツよ!」


凄く上機嫌で、凄く綺麗なかばんを開ける山崎先輩。
確かに入っていたのはまだ新しいお化粧道具。


「……はぁ…。」

「……へぇ〜…。」


とは言え、あまりそういうことに詳しくなく、
興味も薄い鈴花さんと私はあいまいな返事をしただけで…
山崎先輩はまた声を張り上げた。


「ちょっと!それだけ!」

「え;いえ…えっと…;」

「そ、そんなこと言われても私たちは…」

「もう!女の子ならもう少し興味持ちなさいよ!
 これ凄く人気で、中々手に入らないのよ!」

「……そうなんですか…。」

「そうよ!アタシも朝から並んでやっと手に入れて。
 …午前中サボっちゃったんだから。」

((…………そこまで凄いものなんですか;))


山崎先輩の説明に、私たちは半ば呆れ、呆気に取られて話を聞いていた。
反論しても話が長くなるだけだろうし、言いたいことを言ってくれた方が良いかと…。

山崎先輩はしばらくそのコスメグッツについて語り、
それが終わると疲れて油断してきた私たちに思いがけないことを言ってきた。


「…と、言うわけで!」

「「?」」

「鈴花ちゃん、ちゃん、さっそくこれで綺麗にしてあげるわv

「「……ええ!?」」

「…そんな驚くことないでしょう…。大丈夫よ、任せなさい!」

「あ…あの;でも…;」

「も、もう昼休み終わっちゃいますよ!」


何とか回避すべく、私と鈴花さんは必死に抵抗を試みたが、
山崎先輩がこういうことを思い立った時はかなりやる気なので断るのは至難の業だった。

おまけに…、


「今回は拒否権はないわよ。」

「え?」

「どういう…」

「これを買うのに午前中サボる口実を付けてもらう代わりに、
 あんたたち二人を綺麗にして写真を撮ってくるって、勇ちゃんたちと約束しちゃったからね♪」


と、とんでもないことを言う山崎先輩。


「「ええーー!?」」


私たちは思わず絶叫。
…というより、これはそんな条件を飲んだ近藤さんを責めるべきなのかもしれませんが…。

ともかく、それを聞いて本能的に即座に逃亡を図った私と鈴花さん。

山崎先輩はもちろん追いかけてきたけど、
山崎先輩と約束した近藤さん『たち』に含まれていなかった様子の、
斎藤先輩と山南先輩に助けられて何とか事なきを得ました。




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2011.05.08