-近藤さん編-



とあるお昼休み。
私は用事で近藤さんを探していた。

近藤さんはこの学園の生徒会長さん。

なら、生徒会室にいる……わけではなく、
今も行ってみたけど、いたのは土方先輩と山南先輩だけだった。

近藤さんは会長さんなのに一番生徒会室にはいない。
学園では人気もあるし、皆に慕われているし、
もちろんやる時はやる人だが…普段は結構サボっていたりもする。

近藤さん曰く、

「トシと山南さんがいるから俺がいなくても大丈夫!」

とのこと。

優秀な二人を信頼しているから。
と、格好の良いことを言っていたけど、土方先輩曰く、

ただサボりたいだけ。

でもあるみたい…。

どちらかと言うと……、
近藤さんがいなくて困っている二人を見ていると、土方先輩の意見が正論に思えてくるけど…。

私はそんなことを考えながら近藤さんを探していて、
やっと見つけた時、やっぱり土方先輩の意見が正しいかな、と思ってしまった。


「近藤さん!」

「ん?ああ…君。」


近藤さんは中庭の目立たない場所でお昼寝中だったから…。


「何してるんですか?」

「もちろん、見ての通り昼寝だよ。君も一緒にどうだい?」

「土方先輩や山南先輩が探していましたよ?」

「大丈夫だよ、いつものことだから。」

「……」


まったく悪怯れた様子はない近藤さん。

確かにいつものことだけど…。

私は苦笑いするしかなく、何をしに来たのかも忘れそうだったけど、
近藤さんに言われて思い出した。


「で、何か用事?君。」

「あ、そうでした…これを…。」


ポケットから手紙を取り出して近藤さんに差し出す。


「やあ、もしかしてラブレター?照れるね〜。」


手紙を受け取った近藤さんは、
頬を掻いて照れ臭そうに笑ってそう言ったけど、


「私じゃないです。お兄ちゃんからです。」


私がそう答えると、少し残念そうに苦笑いしてごそごそと手紙を開いた。


「あ、そうなの?からのラブレターね。」


私宛ての手紙とは別に同封されていたもので、
近藤さんに宛てたものだから当然私は見ていない。

近藤さんは手紙を開いて目を通すと、いきなり吹き出した。


「?」


気になった私が首を捻ると、近藤さんは手紙を私に見せて一文目を指差した。


「……あ…」

「読まれてるね…。」


近藤さんはクククッと笑いを堪え、私も思わず笑ってしまった。


『言っとくが、ラブレターじゃないからな。』


書き出しにはそんなことが書かれていた。
今まさに交わした会話そのままの言葉。


「近藤さんのこと、お見通しですね。」

「本当だね。まったく、何書いてるんだか、は。」


近藤さんは笑いの納まらないまま手紙に目を通すと、
そのままの嬉しそうな顔で私に返事をしてくれた。


「ありがとう、君。」

「いえ。」

「返事書いたらまた渡すから、によろしく言っといてくれるかい?」

「わかりました。」


近藤さんの返事を聞いて、私は頷いて立ち上がった。


「それじゃあまたね、君。」


近藤さんはそんな私に手をあげて見送ってくれたけど、
その後はまたごろっと横になった。どうやらまだお昼寝する気のようで…。


(近藤さんの休み時間は本当にお休みの時間なんですね…。)

きっと生徒会室で忙しくしているであろう
土方先輩と山南先輩が少し可哀相に思ってしまった…。




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2008.07.09