ちゃ〜んvV

「な、何でしょう?山崎さん?」

「……何よ?その顔は?」

え!?い、いえ…別に…;」


上機嫌の山崎さんに呼ばれ、何かいやな予感を感じた
山崎さんに指摘され、慌てて苦笑いして誤魔化した。




-今日は髪型を変えて-




「はい!ここに座ってね〜vV


微妙に抵抗はしたもののあえなく部屋に連れていかれたは、
山崎さんの部屋の鏡台の前に座らされた。


「……いったい何をするんですか?」


大体予想はついていたが一応尋ねてみる。


「ちょっと今髪型造りに凝ってるのよ。」

「髪型?」

「そ〜、でね、やっぱり自分よりは誰か他の人の方がやりやすいでしょ?」

「それはそうですね…。」


お化粧ではないことには一先ずホッと安堵のため息をつき大人しくすることにした。
山崎さんは話しながらもの髪をせっせと梳かしている。


「でも鈴花ちゃんはちょっと髪が短いし、トシちゃんは嫌がるから〜。」

「……土方さんにもお願いしたんですか?」

「ええ、そりゃね♪でも即答で拒否されたわ。」

「…………;」

「で、ちゃんに白羽の矢がたったってわけ!
 ちゃんは髪が長いし〜サラサラで〜一回やってみたかったのよvV

「はぁ……。」


は半ば呆れ気味に苦笑いをしたが、
楽しそうにしている山崎さんを咎めるのも気が引けたので、大人しくしていた。


「こんなのはどうかしら?」

「はぁ…。」

「これは?」

「あ、はい…。」

「……じゃあこれは?」

「…いいんじゃないですか?」

「………………もう!ちゃん!」

「えっ?な、なんですか?」


張り合いのないの返事に痺れを切らした山崎さんは、 いきなり声を張り上げ怒鳴った。
当然は驚いて振り返り、その先では山崎さんの端正な顔が自分を睨んでいて…。


「あ、あの…;」

「もう!張り合いがないわね!もっと何か感想はないの!?」


は焦ったが、山崎さんに言われてにっこり笑うと、


「え……あ、山崎さんはやっぱり器用だな…て思いますけど。」


と言った。
だが山崎さんはその答えにガクッとずっこけると、そうじゃなくて!との肩を掴んだ。


ちゃん自身が気に入ったかとか、似合うかとかを聞いているのよ!」

「え?…えっと…じ、自分では何とも…;」

「はあ?」

「あ、あの;き、気に入らないとかではないです!
 そんなことはないですけど…何と言っていいか…;」


しどろもどろになりながら必死に弁解するに山崎さんはふむ、
と考え込んでいたが、にやっと不適な笑みを浮かべた。
そんな山崎さんには何かいやな予感を感じ、慌てて逃げようとした…


「……っ;あああの…よ、用事思い出し…」

「ダメよちゃんv


が、あっさり捕まってしまった。


「や、山崎さん;」

「髪型だけだから自覚がわかないのよね〜、
 やっぱり中途半端はダメよね♪こうなったら徹底的にやるわよ!」

「ええ!?も、もう十分ですよ…;」

「ダ〜メ!ちゃん全然満足してないじゃない。」

「満足です…;」

「とにかくダメ、大人しくしなさい。」

「や、山崎さ〜ん;」


結局、の反応が悪かったとのことで着物から全部着替えることになってしまった…。



***



「きゃーvV可愛いじゃない!さすがア・タ・シv


を思う存分着飾った山崎さんはすっかり満足したようにそう言った。


「う…そ、そうですか…?」


対するは少し疲れたような不安そうな声を上げた。
実は結構抵抗をつづけていた
何となくおめかしするのは照れ臭く、 山崎さんがこのままでは終わらない気もしていたからだ。

とはいえ、どんなに綺麗で女性らしい(?)と言えども山崎さんは男性、がかなうはずはなかった…。

不安そうなの返事に山崎さんは慌ててを引っ張っていくと鏡台の前に座らせた。


「そうよ!ほらほら!見て御覧なさいよ!」


そして必死にを褒めた。


「ほ〜ら〜!ね、可愛いでしょ!これならみんなイチコロよ〜んvV

「……え!?や、山崎さん!///


困ったように鏡台を眺めていたは山崎さんの言葉に赤くなって驚いて振り向いた。


「さ!さっそくみんなに見せに行きましょ♪
 まあ、こ〜んな可愛いちゃん、できれば誰にも見せたくないんだけどね〜。
 でも、みんなの反応が見たいしね♪絶対面白いわよ!」


山崎さんはププッと吹き出すように笑って、それは楽しそうである…。


「や、山崎さんいいですよ;別に皆さんに見て頂かなくて…。
 山崎さんに綺麗にして頂いて、山崎さんに褒めて頂いて…十分ですから…;」

「…………ちゃん、その言い方は誤解を招くわよ///

「え?」


このままでは晒し者にされそうだと慌てたは、
必死で山崎さんを 説得したが、何故か山崎さんは赤くなって頭をかいた。


「??」


そしてちらっと不思議そうな顔をしているを見たが、
すぐまたいつもの調子に戻ると油断していたを掴んで部屋を出た。


「さー!行くわよ!まずは…そうね、勇ちゃんから行きましょう!」

「ええ!?や、や、山崎さん!?結構ですって!本当に!」


必死に抵抗しただったが、油断していたこともあってあっさり連れていかれてしまった…。



***



「う〜ん…だけどな〜トシ〜。」

「だけどじゃねぇよ、近藤さん。ここははっきりしておかねぇと後々…。」

「確かにこの件は早い方が良いかもしれないよ、近藤さん。一度検討して…」




「山崎さ〜ん、離して下さいよ〜;」

「ダメよ!ダメダメ!ちゃん往生際が悪いわよ!いい加減覚悟を決めなさい!」


何やら真剣な話をしていた近藤さんたちは部屋の外で騒いでいる声に話を中断した。


「何だ、何騒いでる!」


中でも怒ったのは土方さんで、
怒鳴ると同時にばっといきなり障子を開けた。


「「!!」」

「ひ、土方さん…;す、すみません!」

「……お前…か…?」


怒鳴られは慌てて謝ったが、土方さんはに目を止めると
目を見開いてぽかんと間抜けな質問をした。


「へ?」


は不思議そうに首を傾げたが、山崎さんはしてやったり!
と言わんばかりの笑顔で土方さんに声をかけた。


「ト・シ・ちゃ〜んvVどう?惚れ直したでしょ〜vV

「や、山崎…お前の仕業か…///;」


土方さんは山崎さんを睨み付けたが、
顔が真っ赤で動揺しているためいまいち迫力に欠けている。


「どうしたんだい?土方くん?」

「トシ?」


怒鳴って出ていった割に説教も聞こえてこないので、
不思議に思った近藤さんと山南さんも顔を出した。


「あ!勇ちゃん!敬ちゃん!丁度いいわ!見て見て!」

「きゃ!ちょ…や、山崎さん;」


土方さんの反応に気を良くした山崎さんは今度は近藤さんたちの前にを引っ張って行った。


「どうどう?勇ちゃん!敬ちゃん!」

「「…………」」

「……///;」


じっと見られて居心地悪いだが、
散々抵抗して今に至っているため半ば諦め気味である。


「あの…すみません…お騒がせして…。」


仕方ないのでは深々と頭を下げると謝った。


「あ…いや…;」


に謝られ、我に返った山南さんは何故か狼狽え、
近藤さんはにっこり笑うとぽんとの肩を叩いて顔を上げさせた。


「いや〜、君!見違えちゃったよ!
 いつも可愛いけど、今日はすごく綺麗だよ♪」

「え?」


きょとんと不思議そうに顔を上げただったが、
そんなを見て山南さんや土方さんはますます赤くなり、
山崎さんは得意げだった。


「でしょ〜vV今回は自信作よ!」


普段は可愛らしい『女の子』という印象が強いであろう
袴姿だが長い髪と花柄の着物が少女らしい印象を与えている。

しかし今は『女性』と形容するような外見をしている。
着物もいつものような可愛らしいものではなく少し大人っぽい、山崎さんが選んだもの。
そして薄い化粧もし、いつもは下ろしている髪も上に上げていて首もとが見えていた。


「島原の芸妓にも負けないんじゃないかな〜。」

「「近藤さん!」」

「な、なんだよ?俺は別に変な意味で言ったわけじゃないよ;」


にやにやと楽しそうに言った近藤さんを土方さんと山南さんが叱咤し、
近藤さんはうなだれた。


「あ、あの〜?」

「お前は気にしなくていい。」

「そうそう、君は気にしないでいいから。」

「は、はあ…?」


何やら三人だけで会話が成立し、
すっかり混乱気味のはますます不思議そうにしていて、
そんなを余所に土方さんは山崎さんを睨み付けた。


「おい山崎、もう良いだろ。」

「何が?」

に決まっている。……さっさと着替えさせて出られるよう準備をしておけ。」

「あら、何かあるの?」

「……そういうわけではないが…」


土方さんはばつの悪そうな顔になりふいっと顔を背け、
それを見て山崎さんはを抱き締めて土方さんをからかった。


「やだ〜トシちゃんったら!可愛いちゃんを人に見せたくないのね〜vV

「なっ!?そ、そんなこと言ってないだろう///!!」

「顔に書いてるわよ〜♪」

「山崎!!」


顔を真っ赤にして怒っている土方さん。
しかしそれは怒っているからではなくて、単に照れているだけで、
山南さんも近藤さんも珍しい土方さんの照れた様子に微笑ましく思っていた。


「いや、でも本当に綺麗だよ君。」

「あ、ありがとうございます…山南さん…///


そんな中、ふと笑顔になってに声をかけた山南さん。
今まで特に気にとめていなかったのに率直に言われた言葉には赤くなって お礼を言い、
そんな姿がまた可愛らしいと三人はに見惚れていた。


(ふっふっふ〜この三人はもう十分ね♪)

「さあ!ちゃん次に行きましょ〜♪」

「……へ?山崎さん次って…」

「おい山崎!」


慌てる二人を余所に、山崎さんはまたずるずるとを引きずっていった。



***



「山崎さん、もういいんじゃないですか?」


三人の反応に照れてしまったのか、
また抵抗しだしただったが 山崎さんはまだダメだと言って離してくれない。


「まだ肝心な人に見せてないわ。」

「肝心な人?」


ふふっと楽しそうに笑って山崎さんがを振り返った時、
少し驚いたような低い声が後ろから聞こえた。


「………?」

「え?」


その声に振り向いた先にいたのは斎藤さんだった。


「斎藤さん。」

「あ〜ハジメちゃん!どうどう?」

「え?え??」


山崎さんは斎藤さんに気付くと今まで以上に楽しそうな顔になり、
ずいっとを斎藤さんに近付け、わけがわからず混乱している
何故か固まっている斎藤さんに不思議そうに声をかけた。


「あ…の?斎藤さん?」

…」

「は、はい?」

「その姿は…」

「え?あ、あの;これは山崎さんが…」

「……山崎さん以外に誰かに見せたか?」

「え?…え〜っと、さっき近藤さんたちにはお会いしましたが?」

「……」

「斎藤さん?」


難しい顔をしている斎藤さんはにいろいろ聞いてきたが、
質問の意図がわからないは首を傾げるばかりだった。

そんな中、山崎さんがからかうように口を開いた。


「それでも〜みんな照れちゃって〜vトシちゃんなんか耳まで真っ赤だったわよ♪」

「………」


ぷぷっと意地悪く言った山崎さんに斎藤さんは一層険しい顔になると、
突然を抱き締めた。


「!!?さ、斎藤さん!?」

……そういう格好は俺の前だけにしてくれないか…。」

「…え?」

「俺はお前のその姿…誰にも見せたくはない……。」

「……さ、斎藤さん…///


いきなりの斎藤さんの行動と言葉には真っ赤になって狼狽えていた。
確信犯の山崎さんは満足気にその様子を眺めていたが、
斎藤さんはを抱き締めたまま山崎さんを睨み付けると、


「たとえ…山崎さんでも…」


と、低い声で呟いた。
山崎さんは少し不服そうに頬を膨らましたが、
観念したようにひらひらと手を振ると、


「あ〜もう!わかったわよ、邪魔者は退散するわ!
 じゃあね〜ちゃんvがんばってね〜♪」


と言ってを残して行ってしまった…。


ええ!?山崎さん!?ちょっと待って…」

。」

「は、はい!!」


山崎さんが行ってしまい、慌てまくるだが、
斎藤さんが名前を呼んだので返事をすると、斎藤さんはそっとを離して髪に触れた。


「これも…山崎さんが?」

「え?…は、はい。そうです…似合いませんか…?」

「……いや、そうじゃないが…」

「……?」

「山崎さんばかりお前に触れたと思うと少し妬けるな…。」

「…………!?さ、さ、さ、斎藤さん///それはどういう///

「そのままの意味だ。。」

「はい///?」

「もう今日この後は俺に付き合ってもらうぞ。」

「へ?」

「これ以上お前を他の奴に見せる気はないからな。」

「え…///

「行くぞ…。」

「えっ!?ちょ、ちょっと待って下さい!斎藤さん!?」


もうすっかりご立腹なのか、斎藤さんはの制止も聞かずにずんずん行ってしまった。
その後二人がどうしたのかはまた別のお話……。




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2008.06.06