「あ〜あ…退屈だな…。」 この所、めっきり光を見せてくれない 空を見上げて、青年は不満を漏らした。 -明日天気に- ここ数日続いてる雨。 今は梅雨の時期なのだから仕方ないが…。 こう連日だと気分も滅入ってくる。 おまけに身体もだるいし何事にもやる気は起きないし…。 「気分最悪…。」 雨音を聞きながら目を閉じ、 縁側に倒れこむと、 「藤堂さん」 丁度名前を呼ばれて青年は飛び起きた。 自分のことをそう呼ぶのは一人だけだから…。 「さん」 「どうかしたんですか?」 案の定、飛び起きた青年の前に立っていたのは。 新撰組で数少ない女性隊士の少女。だった。 「どうって?」 「いえ…ご気分が優れないのかと…。」 さっき何気なく呟いた言葉。 は聞いていたのか苦笑いしてそう言い、藤堂さんも苦笑いして頭をかいた。 「あ…いや…さっきのは…何でもないよ…。」 ただ、天気が悪いから、ちょっと気分が乗らないと言うか…。 気持ちが滅入って元気が出ないかな…。 藤堂さんがそう続けると、は納得したように頷く、 「そうですね…。この所雨が続いていますから…お気持ちわかります…。」 然程酷くはないが、小雨が降り続いている空を見上げてはそう答えた。 「雨じゃ出かける気にもなれないし。」 雨に対する不満が尽きない藤堂さん。 頬を膨らませ、ブツブツと文句が止まらない。 そんな藤堂さんの様子には苦笑いしつつも、 何か元気付ける方法はないかと考えていると… 「明日は晴れてくれないかな〜。」 ぽつりと続いた藤堂さんの言葉。 これには閃いた。 「明日…」 「え?」 「じゃあ、明日晴れるようにしましょう!」 「え?…どうやって…?」 唐突に言われた突拍子のないの台詞に、 藤堂さんは思わず尋ね返したが、は何やら自信満々の笑顔。 「ちょっと待ってて下さい。」 そう言い残すと早足に何処かへ行ってしまった。 唖然と見送るしかない藤堂さん。 『じゃあ、明日晴れるようにしましょう!』 去り際の言っていた言葉を思い出すが…。 …一体どうやって…? やはり思うことは同じ。 仕方がないので、言われた通り藤堂さんが待っていると、 「お待たせしました。」 は何やら箱を持って戻ってきた。 そして藤堂さんの傍へ腰を下ろし箱を差し出した。 「これ…何?」 とりあえず箱を受け取り中を見てみると、入っていたのは紙と筆と紐。 これが、『明日の天気を晴れにする』のに何か関係があるのか…? ますますわからないと藤堂さんがの顔を見ると、 はにっこり笑って、箱の中身を取り出し、 手馴れた様子でそれらを使って何かを作った。 「………ああ…」 そして完成した『それ』を藤堂さんに見せると、 藤堂さんもようやく納得したように声を漏らした。 「てるてる坊主?」 「はい!」 そして『それ』の名前を藤堂さんが口にすると、 はぱっと満面の笑顔で答えた。 *** 「てるてる坊主なんて作ったの、何年ぶりかな…。」 に勧められて、そのあと一緒にいくつかてるてる坊主を作った 藤堂さんは、できあがったてるてる坊主を順番に見ながら苦笑いした。 作ったことはあるが、本当に久しぶりで…。 作るどころか見るのも久しぶりで、懐かしい。 等と話す藤堂さんには笑顔を返して同意した。 「私も最近は作りませんでしたが、小さいときはよく…。」 「小さい時、ってことはさんが?」 「そうですね、兄上と一緒によく作っていた気がします。」 「ふ〜ん…ホント仲良いんだね。」 のことを嬉しそうに話すに、 藤堂さんは少し嫉妬し、作ったてるてる坊主を手に取ると、 「でも、こんなので明日晴れるのかな?」 と、少し意地の悪い言い方をした。 けれど、は顔色一つ変えず、 「晴れますよ。」 と、言い切った。 「………」 「絶対晴れます。」 てるてる坊主なんておまじないの一種だろう。 『絶対』等と言い切れるものでもないと思うけど…。 藤堂さんはそう思ったが、は何故か妙に自信満々だった。 「何でそんな言い切れるの?」 不思議に思った藤堂さんが溜まらず尋ねると、 は、 「てるてる坊主を作って次の日雨が降ったことありませんから。」 と、満面の笑顔で言った。 「……ホントに?」 「はい。」 「嘘…そんな絶対なんて…。」 「でも本当です。」 「…………」 本当に相当自信があるらしい、一歩も譲らないに、 藤堂さんはあることを思いつき、提案してみた。 「ねぇ、さん!」 「はい?」 「そんなに自信があるんだったら賭けない?」 「賭け?」 にっこり笑ってそんなことを言った藤堂さんに、 は少し驚き、目を丸くした。 「うん。明日晴れたらさんの勝ち。雨だったらオレの勝ち。どう?」 藤堂さんはそれでも構わず続きを告げた。 「絶対」の自信があるのなら受けてくれるだろう。 そう思ったから。 はしばらく考えていたが、 「別に…構いませんけど…勝ったらどうするんですか…?」 そう返事をし、それに満足した藤堂さんは、 にっこりと笑顔を見せ、賭けの詳細を提案した。 「じゃあね…」 *** 翌日…。 連日の雨が嘘のように晴れやかな青空だった。 「ね?晴れましたよね?」 その空の下、賭けに勝ったは得意気な笑顔を藤堂さんに向けた。 「ホントだね、」 その笑顔に藤堂さんも笑顔を返し頷いた。 天気が晴れと言うことは、賭けは藤堂さんの負けになるのだが…。 負けたにしては嬉しそうな笑顔。 藤堂さんは澄み渡った青空を見上げ、 もう一度満足そうに笑うと、の手を取り、屯所を出た。 「さあ、何処に行く?」 「本当に何処でも良いんですか?」 「うん、良いよ。さんの勝ちだったからね。」 『さんが勝ったら、明日オレが何処でも好きなところへ連れて行ってあげる。 美味しいものでもご馳走してあげるよ。オレが勝ったら、さんが明日一日オレに付き合ってね。』 藤堂さんの賭けの内容はそんなものだった。 はまったく気にしていなかったが、 どちらが勝っても一緒に過ごすようになっていたのだ。 「…藤堂さん…負けたのに何だか嬉しそうですね?」 自分の手を引き、楽しそうに前を歩く藤堂さんに、 が不思議そうにそう尋ねると、藤堂さんは満面の笑顔を返した。 「やっぱり天気が良いと嬉しいから。さんもそうだよね?」 「…そうですね。」 「じゃ、行こう!」 「はい!」 本当はそれだけじゃない。 こうして好きな人と一緒に居られるから。 藤堂さんは笑顔で返事をしたを見てそう思ったが、 そのことは口にはしなかった。 天気になったこの空の下、好きな人と共に過ごせること、 今はそれだけで満足だと思ったから…。 戻る 2009.07.09
めちゃめちゃ久々な藤堂平助君。
…ごめんなさい…!(土下座) いや〜平助君難しいんですよ!苦手なんですよ!! まあでも何とかかけた今回の作品。 明日天気にするための「てるてる坊主」ネタの話。 賭けの内容が結構したたかで、さり気に平助君らしいかなとか思ってます(笑) 平助君は可愛い顔して結構黒いイメージがあるもので(悪い意味ではないですが) しかし、さり気に梅雨ネタだから6月にUPしたかったんですが、間に合いませんでした(泣) |