買い物をすませて店を出た時、ふわりと柔らかいものが顔に触れ、 冷たいと感じて空を見上げると、ふわふわした柔らかい粉雪が降り始めたところだった。 「わ、すごい……!」 雪が好きなは嬉しくなってそう口にした。 粉雪だから僅かだし、日差しも少なからずさしているから決して積もることはないだろう。 それでもこうして雪を目にできただけでもたまらなく嬉しくて、 は鼻歌でも歌いそうなぐらい上機嫌で帰路に着いた。 -粉雪- 「?」 「あ、斎藤さん!ただいま帰りました。」 「ああ、おかえり…どうしたんだ?何か良い事でもあったのか?」 屯所に戻って顔を合わせた斎藤さんは上機嫌のを見て尋ねた。 「えへへ…わかりますか?」 はにこにこと笑顔でそう答えた。 誰が見ても上機嫌だとわかる様子。 の笑顔につられたように斎藤さんもふっと優しい笑顔になった。 「ああ、わかる。…それで、どうしてそんなに機嫌が良いんだ?」 は斎藤さんを見てもう一度にっこり笑うと、 顔を上げて空を見た。 「?」 斎藤さんも同じように空を見上げると、 ふわっと優しい粉雪が顔に触れた。 「…ああ。」 そっと顔についた雪をぬぐい、 に視線を戻すと斎藤さんは納得したように呟いた。 「雪か……。は雪が好きなんだったな。」 「はい。」 斎藤さんの問いに笑顔で答えた。 本当に雪が好きなんだということがよくわかる。 「そうか…よかったな。」 「はい!ありがとうございます、斎藤さん!」 は笑顔でお礼を言った。 本当に嬉しそうにしているそんな笑顔をもっと見ていたくなって、 斎藤さんはある提案をした。 「、俺と雪見をしないか?」 *** 「わ!すごい!上から見ると結構雪が積もっていたんですね!」 雪見と称してやって来たのはいつかの丘。 町を見下ろす位置から見ると、屋根の上などに雪がうっすらと積もっていた。 「本当だな…、まあ日が射しているからそうはもたないだろうが…。」 「そうですね…。でも、綺麗な雪景色を斎藤さんと一緒に見られて嬉しいです。」 景色に気をとられたように前方を眺めていただったが、 斎藤さんの言葉に振り返りにっこり笑った。 斎藤さんは少し照れ臭そうに笑って、そっとの手をとった。 「寒くはないか?」 「平気ですよ。…でも、斎藤さんの手はあったかいですね…。」 「おまえは…冷たいな…。」 「あはは…さ、斎藤さんの手があったかいから余計ですね; …寒いですから離して良いですよ…;」 は慌てたように手を引っ込めようとしたが、 斎藤さんは構わず力を込めて手を握った。 「構わない。おまえはずっと外にいたから冷えてるだけだろう。」 「そ、それはそうかもしれませんが…///」 ぎゅっと手を握って、真剣な表情で見つめられは赤くなって顔を背けた。 そしてまたじっと雪の降る空を見上げた。 「「………」」 どちらともなく会話は途切れ、二人ともただ静かに雪を眺めていた。 手は繋いだまま…。 *** 雪を見ているのも飽きてきた斎藤さんは隣で熱心に空を見ている の方へそっと視線を向けた。 は飽きる事無くただじっと空をそして雪を見ていた。 降りしきる雪以外は特に変わったものもない景色。 それでもは視線を外さず空を見ていた。 ただ遠くを見ているような目が、少し寂しそうに見えて、 本当はもっと他のものを見ているのでは…と思わせた。 すぐ隣にいて、繋がっているにもかかわらず、 雪同様ふっとはかなく消えそうな雰囲気を感じ、 斎藤さんがたまらず声をかけようとした時、 何かに気付いたようにが声を上げた。 「……あ!」 「!…ど、どうした?」 今までずっと黙って空を見上げていたが突然声を上げたので、 斎藤さんは驚いた様子で尋ね返した。 驚いている斎藤さんにはにっこり笑って振り返ると、空を指差した。 「斎藤さん!斎藤さん!あそこ見て下さい!」 「ん?何だ?何かあるのか?」 「あそこです!あれ!」 不思議そうに首を傾げている斎藤さんをはぐいっと自分の方へ引き寄せた。 すぐ傍に近づいたことに斎藤さんは少し慌てたが、は頻りに空を指差し何かを訴えている。 どぎまぎしつつもの指差した方へ目を向けると何かが光った。 「あ…」 「見えました?」 斎藤さんが声を上げるとは嬉しそうに笑って斎藤さんの方を向いた。 「ああ…。」 斎藤さんもの方を向くと優しく笑ったが、その時になって初めて、 は無意識のうちに大胆なことをしていたことに気付いて慌てて斎藤さんの手を離した。 「あ、わ、えっ…と、すみません…///」 真っ赤になって俯いて謝り、あとずさるように斎藤さんから少し離れた。 少し残念に思った斎藤さんだったが、真っ赤になっているを可愛いと思って吹き出した。 「いや、…ところで今のは?」 が指差した先にあったのは虹色の光。 ほんの一瞬だったが、かすかに光った色がとても綺麗だった。 尋ねた斎藤さんには嬉しそうに笑うと、 「雪の虹です!」 と答えた。 「雪の虹?」 「はい。」 はもう一度空を見て指差した。 「太陽の光にてらされて、雪のひとつぶひとつぶの光のすじが七色に光るんです。」 「なるほど…。」 つられて斎藤さんも空に目を向けるとさっきよりたくさんの雪の虹が輝いていた。 「すごいな……。」 思わず呟いた斎藤さんには嬉しそうな笑顔を向けた。 「綺麗ですよね!」 斎藤さんの返事に満足したのか、満面の笑顔をするを見て 斎藤さんはふっと笑ってはっきり答えた。 「ああ…綺麗だ。」 太陽の光の反射での周りを舞っている雪も虹色に輝いていた。 そんな光の中、嬉しそうに笑っているを本当に綺麗だと…… 斎藤さんはそう言ったのだが、は雪の虹のことだと思い、大満足の様子。 「よかったです。気に入ってもらえて…。 斎藤さんがここに連れてきてくれて、丁度思い出したんです…。雪の虹のこと…。」 「誰かに聞いたことなのか?」 「兄上です。昔、兄上が。」 「……そうか。」 の返事に少しほっとした斎藤さん。 新選組の誰かかと、内心焦ったからだ、だがの次の言葉で不安も消えた。 「雪の虹を一緒に見たのは兄上以外で斎藤さんだけですよ。」 「そうなのか?」 「はい。兄上と見たのも昔、幼い頃なので久しぶりです。」 「…そうか。」 の言葉に安堵し、自分だけが特別だと嬉しかった斎藤さんだったが、 ふと言い掛けたに斎藤さんは慌てて口を開いた。 「せっかくこんなに綺麗ですから…」 「…!」 「は、はい!?……な、なんでしょう?」 「俺は…このことは、お前と…二人だけのことにしておきたい…。」 「え…?」 「この場所も、他には話していない所だからな…。」 「え!そうなんですか?」 「ああ…だから…。」 「はい!でしたら内緒ということで。 この場所とこの雪は私と斎藤さん、二人だけの秘密…ですね?」 斎藤さんの言いたいことは伝わったのか、 は悪戯っぽく笑うと、人差し指を口に当てた。 「ああ…、そうしてくれ…。」 斎藤さんはほっとため息をついた。 と、同時にがふふっと笑ったので斎藤さんは少し首を傾げて尋ねた。 「なんだ?」 「いえ、ありがとございます。」 は斎藤さんの方を見ると何故かお礼を言った。 「何がだ?」 「この場所、斎藤さんの秘密の場所だったんですね…。 そんな所に案内してくれていたなんて…嬉しいなって思ったんです。」 にっこり笑って言ったに斎藤さんも微笑んだ。 「お前がそう思ってくれているなら…来たかいがある…、俺も嬉しい…。」 「そ、そう言ってくれると嬉しいですけど、照れますね…///」 はまた赤くなったが、今度は斎藤さんの顔を見たまま照れ笑いした。 「でも、やっぱり嬉しいです…。 じゃあこの雪の虹はそのお礼ですね。私もこの雪は秘密にします。…ずっと…。」 そっと空に、雪の虹に視線を向け、 そしてまた斎藤さんの方へ向き直るとはにっこり微笑んだ。 おまけ*** 「あ、!」 「どこ行ってたんだよ!」 「さん!遅かったね。心配したよ。」 と斎藤さんが屯所に戻ると、待っていたように 原田さんと永倉さんと藤堂さんがやってきた。 「すみません。でも大丈夫ですよ、斎藤さんと一緒でしたし。」 (((だから余計心配なんだって!!))) 「?」 「ハジメ、おめー見ねぇと思ったらやっぱりと一緒だったのか。」 「ええ。」 「……」 不機嫌そうに言った永倉さんに斎藤さんは悪怯れもなくしれっと言ってのけた。 「でもこんな時間までどこで何やってたんだよ。」 「そうだよ、ちょっと遅すぎない?」 原田さん、藤堂さんも少し拗ねたようにそう言った。 二人の問い掛けに、と斎藤さんは顔を見合わせると笑って、 「「秘密です。」」 と答えた。 「「「え…」」」 「さあ!さあ!もう夕食の時間ですよ!」 「あ、おい!!」 「どういうことだよ!」 と斎藤さんの返事に焦った三人でしたが、 は三人の背中を押して夕食の席へと向かったのでした…。 戻る 2008.01.16
斎藤さんと一緒に雪見〜。というか雪の虹を見に。
雪の虹というのは、昔何かで見たもので一度私も見てみたいのですが。 それはともかく雪が好きなのは私も同じなので、雪ネタは結構書き易いかも? 大好きな人と一緒に雪を見られたら嬉しいですねv …寒いとは思いますが…。 斎藤さんや主人公が風邪をひかないよう祈ります!(笑) あとラスト少しVSみたいなおまけをつけてみました♪ |