-初詣-
「あけましておめでとうございます。」 今日は一月一日新しい年の始まりです。 「ああ、おめでとう。」 新年最初に私が顔を合わせたのは斎藤さんでした。 斎藤さんは機嫌良さそうに見えて、何だか私も嬉しい気がしました。 …でも、 「…斎藤さん、もしかして今まで巡察でした?」 今起きた。という感じではない斎藤さんの様子に私が尋ねると、 「ああ、今戻ったところだ。」 と、斎藤さんは即答。 「そうなんですか…、元日早々お疲れさまです。」 「いや。」 「でも、その割りには元気みたいですね…?眠くないんですか?」 今戻ったところ、ということは徹夜で寝ていないということなのに、 斎藤さんは上機嫌みたい…。 私が不思議に思って尋ねると、斎藤さんは嬉しそうな顔をして、 「間に合ったみたいだな…。」 と呟きました。 「…え?」 何に間に合ったのか、と思っていると、斎藤さんはそのまま続けました。 「、おまえ今起きたばかりだろう?」 「え?ええ、そうですよ?」 「ではまだ誰にも合っていないな?」 「はい、今から挨拶に行こうかと…」 「なら、挨拶の前に俺に付き合ってくれ。」 「へ?あ、斎藤さん!」 斎藤さんはそういうと、私の腕を掴んで慌ただしく屯所を出て行こうとしました。 「あ、ちょ、ちょっと待ってください!」 突然過ぎて何が何だかわからないので、私が慌てて引き止めると、 斎藤さんは不服そうに振り返りました。 「なんだ?」 「どこかへ行くんですか?」 「初詣だ。」 「初詣?」 「ああ。」 斎藤さんの返事に私は苦笑いしました。 「どうしてそんなに急ぐんですか?斎藤さんも今戻ったばかりなら、 ちゃんと近藤さんやみんなに挨拶してからの方が良いんじゃないですか?」 「いや、誰かに合ったら行けなくなるだろう…。」 「?初詣にですか?」 「そうだ。」 「どうしてですか?挨拶した後、行けるんじゃないんですか?」 斎藤さんの言っている意味がわからなくて、不思議に思っていると、 斎藤さんは真っすぐ私に向き直ると、 「俺はおまえと二人で行きたいんだ。」 と言いました。 「え…」 「他の誰かに合って、おまえが誘われたら行けなくなるだろう?」 「あ…えっと…///」 あまりに真剣な斎藤さんの表情と言われた言葉に私は真っ赤になって、 しどろもどろになってしまいました。 「あ、あの…じゃあもし誘われたら、ちゃんと…さ、斎藤さんと約束がありますって言いますから…///」 「………」 「だ、だから、せめて近藤さんには挨拶をした方が…」 「……ああ」 「じゃあ一緒に行きましょうか?」 しぶしぶといった感じではありましたが、 頷いてくれた斎藤さんに私はほっとして、 近藤さんの部屋の方を指差して尋ねました。 「………」 「…?斎藤さん?」 「やはりダメだ。」 「え?…わぁ!?」 「挨拶するのは帰ってからで良いだろう。」 「さ、斎藤さん!?」 斎藤さんは私を抱き上げるとそのまま屯所を出ていってしまいました。 *** 「…その、すまない。」 「あ、いえ…その…もう大丈夫ですから…。」 屯所を出てしばらくして、斎藤さんは私を下ろしてくれました。 「嫌だったか?」 「え?」 「少し…強引だったかもしれない…。その…嫌だと言うなら無理にとは…。」 (少しじゃなかったですよ…) 今になって何故か慌てて申し訳なさそうに謝る斎藤さんに私は思わず笑ってしまいました。 「ふふっ、大丈夫です。嫌じゃないですよ。 ちょっとびっくりはしましたけど…、せっかくですから、お参りしましょう!」 私がそう言って手を差し出すと、斎藤さんは少し驚いた顔をしましたが、 優しく笑うと手を取ってくれました。 「ありがとう…。」 優しい笑顔でそう言われ、無意識のうちとはいえ、手を繋いでしまった事、 しかも自分から手を出したことに気付いて私は真っ赤になってしまいました。 でも、斎藤さんは優しい笑顔のまま私の手を引いて境内に入って行きました。 *** 「すごい人ですね…まだ朝早いですのに…。」 「ああ…、離すなよ。」 「大丈夫ですよ。」 「そうだな、なんせおまえから手を出したんだからな。」 「っ…さ、斎藤さん!///」 斎藤さんはすっかり上機嫌で、私も最初は恥ずかしかったけど繋いだ手は暖かくて、 安心できて、嬉しい気持ちのままお参りしました。 ちょっと強引でびっくりすることも多いけど、真面目で優しい斎藤さん。 斎藤さんと初詣に来られて嬉しいです。 初詣、新年の挨拶と共に、今年一年の決意と願い事を。 (斎藤さんや新選組のみなさん、兄上…大切な人たちみんなにとって、今年一年が良い年でありますように…。) おまけ*** 「斎藤さん…。」 「なんだ?」 「どうしてあんなに慌てていたんですか?」 「ん?」 「初詣に来るの…本当にこんなに急がなくてもよかったんじゃ…。」 「……おまえは知らないかもしれないが …お前を誘おうと思ってる人多かったんだぞ…。」 「へ?そうなんですか?」 「ああ…。」 「どうしてですか?」 「それは……みんなおまえと行きたいからだ…。」 「はあ…それなら…」 「おまえはみんなで行けばと言うだろう…。」 「え、…ええ;それは…。」 「だから、先に言いたかったんだ… 俺はおまえと二人だけで行きたかったんだ…迷惑だったか…?」 「え…///そ、そんな!まさか! その…嬉しいです///斎藤さんと一緒に来れて…///」 「そうか…。俺も…嬉しい。」 「///」 戻る 2007.03.09
捻りがない!!(焦)
え〜1月に拍手に上げていました年賀小説。 すっかり忘れていて今頃UPです(^ ^;Δ タイトルも内容もまったく捻りのないまんまの内容に; でも、ちょい甘めでしょうか? 積極的(?)な斎藤さんにしてみました! 直球で、強引な斎藤さん…好きですvv |