-白雪姫-



昔々あるところに、「白雪姫」と言う名のそれは美しいお姫様がいました。

そして、幸せに暮らしていましたが、お母さんである王妃様が亡くなり、
新しい王妃様がやってくると幸せな生活は一変しました。

新しい王妃様は、白雪姫の美しさを妬んでキツクあたっていました。
それでも白雪姫は、日々明るく元気に暮らしていました。

そんなある日のこと……。



***



「ふふ、今日も私は美しいわね〜v」


王妃様は鏡の前で綺麗なドレスを着て浮かれていました。
そして、鏡に向かって問いかけました。


「鏡よ、鏡よ、鏡さんこの世で一番美しいのは、わ・た・しよね


すると鏡の中が煙に覆われ、金色の髪の人物が浮かび上がりました。


「山崎〜相変わらず、今日もハイテンションだね〜;」

「うるさいわよ!王妃様と呼びなさい!
 局長なのに出番の少ない「鏡の精霊」勇ちゃん!!」

「う……;」


王妃様の一言に、鏡の精霊さんはひどく落ち込みました。
が、それでも王妃様は構わず続けました。


「で、どうなの!勇ちゃん!」

「え?何が?」

「何が?じゃないでしょ!人の話を聞いてなかったの!?」

「あ〜、世界一美しいかってやつね。」

「そうよ!どうなの?」

「う〜ん…。けど、山崎は男じゃ…」


ガチャン!


「余計なこと言ってないで答えなさい?」


鏡の精霊さんが思わず言ってしまった時、
王妃様が持っていた手鏡は粉々に割れ、
王妃様はそれは美しい笑顔で言いました。


「……はい;;」


身の危険を感じた、鏡の精霊はしばらく考えると、
きっぱり言い放ちました。


「やっぱり白雪姫かな?」

「なんですって!?」

「いや、だって、可愛いしね〜。」


しみじみといった感じで、繰り返す精霊さんに対し、王妃様はご立腹です。
持っていた手鏡を壁に投げつけると、大声で家来を呼びました。


「ちょっと!誰か!誰かいないの!!」

「は!はい!何か?」


大慌てで飛んできたのはお城の兵士、石川誠之助さん。


「ああ!誠ちゃん!丁度よかったわ!命令よ。白雪姫を始末して。」

「………は?」


いきなり言われた命令に石川さんは目を丸くした。


「は?じゃないわよ!白雪姫を抹殺するのよ!」

「え……;」

「ぐずぐずしないの!命令よ!早く行きなさい!!」

「は、はい!?」


王妃様に急かされ、石川さんは慌てて部屋を出て行きました。


「あ〜あ、石川くんも可哀想に…。」


その様子を見て鏡の精霊、近藤さんはため息をつきました。


「何言ってんの、勇ちゃんのせいでしょ!
 私の方が美しいって言わないからよ〜。」

「そんなこと言ったってね〜山崎。」

「王妃様と呼びなさい!王妃様と!」


鏡の精と王妃様はなんだかんだ言って仲良しのようです。



***



その頃、王妃様の命を受けお城を出てきた兵士石川さん。
は、大きなため息をついて、すっかり困っていました。


「あ〜一体どうしたらいいんだ〜;;」


いくら王妃様の命令とはいえ、なんの罪もない白雪姫を抹殺するなど、
心優しい石川さんにはできません。

それに、石川さんは白雪姫のことが好きでした。

いつもいろいろ仕事を押し付けられ、大変な思いをしている石川さん。
でもそんな時、優しく声をかけてくれるのが白雪姫でした。
どんなに仕事が大変でも、姫と話せるからがんばれるのです。

石川さんは散々迷いましたが、一先ず姫を誘うと森へ出かけて行きました。



***



「石川さんどうしたんですか?」


森の奥へと連れられて来た白雪姫。
いつもと違う石川さんの様子が気になって尋ねました。


「………」


でも、石川さんは返事をしません。
不思議に思った白雪姫が首を傾げた時、ふと石川さんは振り返り刀を抜きました。


「え…石川さん…。」


白雪姫は驚き立ち止まりましたが、
それと同時に石川さんは刀を振り下ろしました。


「…………」

「…………」


刀を振り下ろされ、驚いて目を閉じた白雪姫。
でも、どこにも痛みはなく、そっと目を開けると、
白雪姫が髪を束ねていた瑠璃色のリボンが宙を舞いました。


「石川さん…?」


白雪姫がもう一度尋ねると、石川さんは膝をついて謝りました。


「すみませんでした、白雪姫…。
 でも、私にはやっぱりできません……!」


辛そうな表情で唇を噛んだ石川さんに、白雪姫は優しく声をかけました。
そして、石川さんは王妃様が白雪姫を抹殺しようとしていることを話しました。


「すみません…。」

「どうして謝るんですか?石川さんは私を助けてくれたじゃないですか?」

「ですが…!」

「でも…私をこのまま逃したら、
 石川さんがお義母様にお仕置きされてしまうのでは…。」


気遣うようにそう言った白雪姫の優しさに、石川さんは微笑みました。


「やっぱり貴方を斬らなくてよかった。大丈夫です。
 私のことはお気になさらず…貴方は逃げて下さい。」


石川さんの言葉に白雪姫は少し考えましたが、落ちていたリボンと
石川さんの刀を拾い上げると、自分の腕を切りつけました。


「!?っ姫!何を!?」


驚いている石川さんを尻目に、白雪姫は腕から流れた血をリボンで拭いました。
そして、血のついたリボンを石川さんに渡しました。


「これを、お義母様に。私は死んだことにして下さい。
 これなら、石川さんも怒られないですみますかね…?」

「…っ、姫!」


自身を傷つけてまで自分を気遣ってくれた白雪姫に、石川さんは深く感激し、
自嘲気味に笑った白雪姫が堪らなくいとおしくなり白雪姫を抱きしめました。


「白雪姫、私は…いつでも貴方のご無事をお祈りしております。」

「……ありがとう、ございます。石川さん。」


照れながらもお礼を言った白雪姫の言葉に、我に返った石川さんは、
たちまち真っ赤になると、大慌てで白雪姫から離れました。

それから白雪姫は王妃様から逃れるために、森の中へ、
石川さんはそのリボンを持ってお城へ帰って行きました。



***



「あら、誠ちゃん。帰ったの?」


部屋にやってきた石川さんを見て、王妃様が声をかけました。


「……はい。」

沈んだ様子の石川さんに、王妃様は意気揚々と尋ねました。


「それで、どうなの?」


石川さんは少し躊躇いましたが、あの血のついたリボンを王妃様に差し出しました。


「!…やったのね?」

「……」


微かに首を縦に振った石川さんに、王妃様は大喜び。
鼻歌を歌いながら、どこかへ行ってしまいました。


「石川くん……。」


辛そうな石川さんの様子に、鏡の精霊が慰めるように声をかけました。



***



さて、その頃。
森の奥深くへ入って行った白雪姫は少し困っていました。


「……随分奥まで来ましたけど…一体どこへ逃げたらいいんでしょう…。
 それに、なんだかお腹も空いてきましたね…。」


あてもなく森を彷徨って、少し疲れてきた様子です。
それでも、とにかく森の中を進んでいると、視線の先に小さな家が見えました。
誰かいるかと思い、白雪姫はその家目指して歩いて行きました。


「木こりの小人一家、新撰組…。」


小さなお家の入り口にはそんな表札がかかっていました。
とりあえず、入り口の戸を叩いてみた白雪姫ですが、誰も出てきません。
残念ながら留守のようです。
困った白雪姫がドアの取っ手を掴むと、入り口のドアが開きました。


「あ…鍵が開いてますね…。無用心ですよ…。」


白雪姫はそうつぶやくと、そっと家の中を覗き込みました。


「……!?…わぁ……;」


家の中を覗き込んだ白雪姫は、一瞬言葉を失いました。
そして…、


「汚い……;」


白雪姫は思わずそう呟きました。
なんせ、家の中はちからり放題。服は脱ぎ散らかされ、食器は出しっぱなし。
所々片付けた後もありますが、その上にまたゴミが乗っています。


「…………」


勝手に人の家に上がりこむのはいけないと思った白雪姫でしたが、
家の中のあまりの汚さに我慢できなくなり、意を決して掃除を始めました。



***



白雪姫が『木こりの小人一家、新撰組』の家に入ってしばらくして、
表に何やら騒がしい声が集まってきました。


「全員いるか?」

「「「「「はい。」」」」」


どうやら、家の主『木こりの小人一家、新撰組』の小人たちが帰って来たようです。
一番年長の小人がみんなを整列させ、点呼を取っていました。


「よし、じゃあ、新八、原田、平助。お前たちは切ってきた木を裏に運んでくれ。
 総司と斎藤は、取ってきた食料を食料庫に、山南さんは俺と家に入って食事の支度を。」


リーダーらしき小人さんがみんなに支持を出すと、
それぞれ仕事に取りかかろうとしました。…が、その時…。


「…あれ?」

「どうした?山南さん?」


家に入ろうとした、めがねをかけた小人の『山南さん』が声を上げました。


「家の鍵が開いてるね…。」

「何?誰だ、今日最後に家を出たのは!」


リーダーの小人さんはみんなを見て怒鳴りました。


「僕じゃないです。」

「……俺も、違います。」

「オレじゃないよ。」

「…左之、おめーじゃねぇのか?」

「……あ"」


赤い髪の小人さんに言われ、灰色の髪の小人さんが慌てました。


「原田……今日は飯抜きと…。」

「ちょ…!待ってくれよ!土方さん!!」


厳しいリーダの小人さん、『土方さん』の容赦ない発言に、
灰色の髪の小人さん、『原田さん』は必死に弁解しましたが、
土方さんは無視して家に入って行きました。


「まあまあ、土方くん。」


必死の原田さん同情し、山南さんが土方さんを宥めるように
声をかけましたが、土方さんは一歩家に入ると、立ち止まりました。


「?土方くん?どうしたんだい?」


何故か固まっている土方さんを不思議に思い、
山南さんも家の中を覗き込むと…。


「え……どうして?」


山南さんも驚きの声を上げた。
二人の様子に不思議に思った他の小人たちもみんな家の中を覗き込みました。


「え?」

「わ…」

「すげーっ!」

「…………」

「な、なんでこんな綺麗になってんだ…。」


見るも無残な朝の様子と打って変って綺麗になっている
部屋にみんな驚きを隠せません。


「泥棒でも入ったのかな…;」

「普通泥棒が入ったら部屋は荒らされるものだと思いますけど…。」

「もともと荒れてたから綺麗になったとか?」

「んなわけねーだろ…;」


みんなが口々に話していると、土方さんが口を開きました。


「とにかく!誰かが家に入ったのは間違いねぇようだ。
 盗まれたものがないか、不審な者がいないか、家の中を調べろ。」


土方さんに言われ、みんな各自家の中を調べることにしました。


「うぉ!」

「どうした!何かあったか!」


台所に入った原田さんが叫び声を上げたので、土方さんが慌てて駆けつけると。
赤い髪の小人さん『永倉さん』と茶色い髪の小人さん『藤堂さん』もいました。
そして、机の上には食事の用意が…。


「すげー…食事の用意までできてるぜ…。」

「台所も綺麗になってるし…あれだけ酷かったのに…。」


永倉さん、藤堂さんが感心したようにそう口にし、
そして原田さんが、


「しかも、すげー美味いぜ!」


と、手前の料理をつまみ食いしました。


「原田!!」

「げっ!?土方さん…!?」


食事抜きを言い渡されているのにつまみ食いをして、
原田さんはまた土方さんに怒られてしまいました。


***


さて、他の小人さんたちはと言うと、2階に上がって行きました。
青い髪の小人さん『沖田さん』と黒い髪の小人さん『斎藤さん』、
そして山南さんの3人は各自2階の部屋を調べていました。

端から順に点検していましたが、とある部屋の前で人の気配を感じて
斎藤さんはその部屋に入りました。そこはみんなのベットがある寝室でした。


「あ……。」


部屋の中に入ると、ベットの一つで人が寝ています。
斎藤さんは少し躊躇いましたが、傍へ寄ると彼女を、白雪姫を起こしました。


「おい…おまえ…。」

「う〜ん…。」


白雪姫は、ゆっくり目を開け起き上がりました。


「……おはようございます…。」


まだ意識のはっきりしていない白雪姫とりあえず挨拶しました。


「……お前、何者だ?」


斎藤さんは呑気な白雪姫に呆れつつも尋ねました。


「………わ!?」


やっと意識が覚醒した白雪姫は、
斎藤さんの存在にはっきり気がついて慌てだしました。


「あ、ああ、あの、えっと;;;」

「…落ち着け。」

「あ、はい…;」


慌てる白雪姫に対し、斎藤さんは冷静です。


「お前どうしてこの家に…?」

「あ、勝手にお邪魔してしまってすみませんでした…。」

「斎藤さんどうかしました?…あれ?貴方…誰ですか?」


白雪姫と斎藤さんが話をしていると、沖田さんがやってきました。
その後、山南さんもやって来て白雪姫は3人と下に降り、
小人さんみんなに会うことになりました。



***



「……では、命を狙われていてここまで逃げてきた。
 …と、そういういことだな…。」


リーダの土方さんが白雪姫の話を聞いて、そう言いました。


「はい…。あの、勝手にお邪魔したことは申し訳ありませんでした。
 扉が開いていたので…つい…。それにいろいろしてしまって…;」


すっかり落ち込み恐縮している白雪姫に、小人達は優しく声をかけました。


「何、良いってことよ!」

「そうだよ!掃除して、食事まで作ってくれて助かってるよ!」

「しかもすげー美味かったぜ!」

「ええ、だからそんなに落ち込まないで下さいよ。」


みんなに励まされ、落ち込んでいた白雪姫はゆっくり顔を上げるとお礼を言いました。


「……ありがとうございます…。」


今まで暗い顔をしていた白雪姫が、突然にっこりと笑顔を見せたので、
小人達は一瞬焦りました。


((((((( ……可愛い///// )))))))


可愛い白雪姫の笑顔に、みんな思わず見惚れましたが、
リーダーの土方さんは我に返ると咳払いをしました。


「ゴホン!…まあ、何だ…。勝手に上がりこんだことは褒められたことではないが、
 困っている時はお互い様だ。家のことをしてもらったことについては感謝しているし…。
 おまえがここに居たいと言うなら…別に構わないが。」


土方さんの言葉に白雪姫も、他の小人たちも驚きましたが、
土方さんが構わないというのなら、止めるものは他にいません。
白雪姫は小人たちの家で一緒に暮らすことになりました。


「…ありがとうございます。新撰組のみなさん。」

「いや〜なに、良いってことよ!」

「お〜!それなら今日は宴だ〜!!」

「「お〜!!」」


小人たちはみんな大賛成し、浮かれながら台所へ向かっていきました。
なんだかすっかり盛り上がっている小人たちを白雪姫は微笑ましく眺めていました。


「…おい、おまえ…。」

「え?」


声をかけられ振り返ると、黒い髪の小人さんが後ろに立っていました。


「何か……痛っ!」


黒い髪の小人さんは何かと思い話しかけた白雪姫の腕を掴みました。
力を入れていませんが、怪我をしていた白雪姫は顔をしかめました。


「…やはり…怪我をしているだろう。」

「うっ…どうしてわかったんですか…;」

「見ればわかる…」


黒い髪の小人さんは黙々と白雪姫の傷の手当てをしてくれました。


「…ありがとうございます…えっと…。」

「…斎藤。」

「はい、ありがとうございました。斎藤さん。」


白雪姫がにっこり笑ってお礼を言うと、斎藤さんも微かに微笑んでくれました。

こうして白雪姫は小人さんたちと暮らし始めました。



***



「ちょっとどういうことよ!!」


白雪姫が小人達と暮らすようになってしばらくして、
お城で王妃様の絶叫が響いていました。


「どうかしたのかい?山崎?」


鏡の精霊さんが声をかけると王妃様は怖い顔で振り向きました。


「どうしたじゃないわよ!勇ちゃん!白雪姫どうなってるの!」

「え?」

「え?じゃないわよ!生きてるじゃない!」

「ど、どうしてそれを?」

「勇ちゃんがこの前、誠ちゃんに報告してたでしょ…。」

「………;」


白雪姫のことを心配した石川さんに先日、様子を見せてあげたことを
近藤さんは思い出しました。


「あ〜あれは…;」


鏡の精霊近藤さんは、必死に言い訳しようとしましたが、
王妃様はもう、聞く耳持ちません。


「もういいわ!私が直々にやるわよ!」


王妃様はそういい残し、お城を出て行ってしまいました。


「あ〜まいったね〜;;」


鏡の精霊近藤さんは困ったように頭をかきました。



***



ところ変わってこちらは『木こりの小人一家、新撰組』の家。

白雪姫は今日もお仕事に行っている小人さんたちの帰りを待ちながら、
一人留守番をしながら家事をこなしていました。


「今日もいい天気ですね〜♪」


白雪姫は上機嫌で洗濯をしていました。
…と、そこへ。


「これはこれは!可愛いお嬢さん

「え?」


白雪姫が後ろを振り返るといかにも怪しい黒いローブを着た人物が立っていました。


「あの…どちら様ですか?」

「ただの通りすがりの物売りよりんごはいかが?」

「え…。」


ローブを着た物売りさんは、真っ赤な綺麗なりんごを差し出しました。


「今ならお安くしておくわよ…ってか、タダでいいわよ。お試し品だから

「…でも、知らない人からものを貰っちゃダメって言われていますから…。」


白雪姫はそう言いましたが、物売りさんは引き下がりません。


「仕事に出ている小人達が帰ってきた時に美味しいりんごで
 おやつでも作ってあげていれば喜ぶんじゃないかしら?」

「う〜ん…。」

「大丈夫怪しくないわよ。」


どこからどう見ても明らかに怪しい物売りさんはそう言って、
白雪姫の手にりんごを握らせました。


「さあ、とりあえず味見してみて?」

「え…このまま食べるんですか?私が?」

「得たいの知れない人から貰ったものをいきなり
 小人達に食べさせてもまずいんじゃないかしら?」

「う〜ん??」


言ってることが矛盾だらけの物売りさん。
白雪姫は頭の上に「?」を飛ばしながらも流されるままにりんごを口にし、
りんごを食べてしまった白雪姫はその場に倒れてしまいました。


「やったわ!今度こそ!」


物売りさんはグッとガッツポーズをすると鼻歌を歌いながら、
その場を去っていきました。怪しい物売りはもちろん王妃の山崎さんでした。



***



「あ!白雪姫!」


仕事を終えて戻ってきた小人たち。
家の前に倒れている白雪姫を見つけて大慌てです。


「どうした!何があったんだ!」


慌てて駆けつけて見ると、どうやら白雪姫は眠っているようです。
ですが、声をかけても、揺さぶっても目を覚ましません。


「…どうなんってんだ?」


小人たちが困っていると、


「ん?どうしたぜよ?」


不思議な離し方をする男性が通りがかりました。


「…なんだ?あんた?」

「わしは、通りすがりの王子ぜよ。何かあったんじゃき?」


ちょっと怪しい気はしましたが、小人たちは自称王子を名乗る男性に事情を説明しました。


「ん〜これは、毒リンゴを食べてしまったに違いないぜよ。」

「「「「毒りんご?」」」」

「そうじゃき、そういう話を聞いたことがあるぜよ。」

「じゃあ、どうやったら白雪姫は目を覚ますんですか?」


小人たちが必死の思いで尋ねると。
王子様はにやっと笑って。


「王子が『きす』をすれば目を覚ますぜよ。」

「なんだよ『きす』って?」

「魚か…?」


小人たちが不思議がっていると、王子様は。


「接吻のことぜよ。」


と、あっさり言いました。


「「「「「「なっ!?///」」」」」」

「って、王子ってことはあんたが…?」


王子様の言葉に小人たちは真っ赤になり、慌てました。
そして、不服そうに土方さんが尋ねましたが、王子様は首を横に振りました。


「いや、確かにこの子も面食い娘ぜよ。
 けど、わしには心に決めた子がおるぜよ。わしはできん。」

「でも、王子の口付けじゃないとダメなんじゃないの?」


白雪姫が他の人と口付けするのは嫌ですが、
目を覚まさないのも困るので、小人が王子に尋ねると、
誰か森の奥から走ってくる人物がいました。


「白雪姫!!」


血相を変えて走ってきたのは石川さんでした。
倒れている白雪姫を見て、慌てて駆け寄りました。


「…っ!どうしてこんなことに!」


辛そうにそう呟いた石川さんを見て、王子様が言いました。


「別に王子じゃなくてもいいぜよ。この子にとって『王子様』になる者なら誰でも。
 丁度いいし、彼にやってもらえばいいぜよ。」

「は?」


突然で状況が飲み込めていない石川さんが顔を上げました。
王子が事情を説明すると、石川さんは真っ赤になって慌てました。


「なっ!///そ、そんな恐れ多いこと…///

「けど、おんしこの子が好きぜよ?」


王子が石川さんを説得していると、小人の1人、沖田さんが口を開きました。


「別に王子様じゃなくてもいいなら僕がやりますよ。」


そう言って、白雪姫に近づきました。


「え!」

「な!?総司!?」

「ずりーぞ!そんなら俺がやる!」

「いや!オレが!」


沖田さんが言い出したことで、みんなが口々に名乗りを上げました。


「あ〜…ややこしいことになったぜよ;;」


自分が言い出したせいでもあるので、少し責任を感じた王子様は
困ったように事の成り行きを眺めていると、

わーわーと言い争っている輪から一人離れている小人さんが、
すっと、白雪姫に近づき…



ちゅ



「あ…」


白雪姫に口付けしました。


「……あ、あれ?私…どうしたんですか?」


小人さんの口付けで目を覚ました白雪姫。
状況が飲み込めず混乱している様子です。


「あれ?斎藤さん?どうしたんですか?」

「別に…なんでもない。」

「そ…そうですか?」

「ああ…それより、洗濯が途中のようだが…?」

「あ!そ、そうですね;ごめんなさい。
 いつの間にかみんな帰ってたんですね。」

「ああ…俺も手伝おう。」

「あ、ありがとうございます!斎藤さん。」

「いや。」


斎藤さんはふっと微笑むと、白雪姫の手を取り家の中に入っていきました。


「あ〜……黒い小人さん一人勝ちぜよ…。
 まあ、姫さんは無事じゃし、ややこしいことになりそうじゃき。
 わしはそろそろ帰るぜよ……、待ってるぜよ!鈴花さんvvv


王子様は白雪姫の無事を確認し、愛しいお姫様の下へ帰っていきました。
言い争っている小人さんたち+石川さんが白雪姫が目覚めたことに気づくのは、
もうしばらく後になります…。


そして、白雪姫抹殺を企てていた王妃様ですが、鏡の精霊近藤さんが白雪姫の安否について、
王妃に嘘を報告してくれたお陰で、王妃様が白雪姫の無事に気づくことはありませんでした。


こうして、白雪姫はその後はたまに様子を見に来てくれる石川さんと
小人たちと仲良く暮らしていきました。



めでたし、めでたし。



***



キャスト

白雪姫・・・
王妃様・・・山崎さん
鏡の精霊・・・近藤さん
お城の兵士・・・石川さん

リーダーの小人さん・・・土方さん
めがねをかけた小人さん・・・山南さん
赤い髪の小人さん・・・永倉さん
灰色の髪の小人さん・・・原田さん
茶色い髪の小人さん・・・平助君
青い髪の小人さん・・・沖田さん
黒い髪の小人さん・・・斎藤さん

王子様・・・梅ちゃん




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2007.05.16