-桃太郎-



むかしむかしあるところに、おじ…


「ちょっと待った!!」

「近藤さん、解説を止めるのはどうかと思うよ?」

「何言ってんだ!山南さん!言うこと言っとかないと、
 俺たち『おじいさんとおばあさん』にされちまうんだぜ!」

「…私たちは二人とも男だから、『おばあさん』はおかしいね…。」

「おじいさんでもないし!そこんとこ頼むぜ!」


…………


「解説困っているようだよ?」

「けど『おじいさんとおばあさん』だったら俺と山南さんが夫婦ってことに…」

「……それは困るね…。」

「だろ?」


…………近藤さんと山南さんと言う名の二人がいました。


「「そのままだな(ね)。」」


…………


『ちょっと二人ともいい加減にしなさい!話が進まないでしょ!!By山崎』

「「ごめん…;」」


…ありがとう山崎さん!


『いいのよ〜♪その代わりアタシの活躍増やしてねv


…………;


『…本当に進みませんよ……。By斎藤』

『あ、そうね。じゃあ頼むわよ!』


…………え〜……コホン。
近藤さんと山南さんは町から少し離れた所で暮らしていました。
今町では鬼が出て、町の人をを困らせているそうで…

近藤さんと山南さんも鬼を退治したいのは山々ですが、
近藤さんは怪我をしていて今は刀を持つことができず、
山南さんも鬼を退治するためのカラクリを発明していましたが失敗続きでした。


「なに、失敗は成功の元だよ!」

「……勘弁してほしいんだけどね…;」


それはともかく、今日もカラクリが失敗し、爆発してしまったので、
汚れた着物を洗濯しに、山南さんは川へやって来ました。


「今日のは絶対成功するはずだったのに…何がいけなかったんだろう…。」


山南さんが考え事をしながら洗濯をしていると、上流から大きな桃が流れて来ました。


どんぶらこどんぶらこ

「…火薬の量を間違えてしまったのかな…」

どんぶらこどんぶらこ

「……いや、そんなはずは…」

どんぶらこどんぶら… 「山南さん!桃が行ってしまうよ!」


考え事をしていた山南さんの前を桃が通り過ぎそうになり、
追加の洗濯物を持ってきた近藤さんが慌てて声をかけ、
なんとか二人で桃を持ち帰りました。


「危ないところだった…。」


桃を持って帰った近藤さんと山南さん。
さっそく食べようと刀を構えました。


「よし!久々に俺の腕を見せよう!」

「そうだね、桃ぐらいなら大丈夫だろう。」


しばらく刀を持っていなかった近藤さん。
意気揚揚と刀を構え、やる気満々です。


「千切りでもみじん切りでも何でも来いだよ!」

(!!)

「近藤さん…せめて食べやすい大きさで頼むよ。」


山南さんは苦笑いしつつも、
楽しそうに刀を構えている近藤さんを止めはしませんでした。


「いざ!」

『てか!刀で切るなよ!!』


近藤さんが今まさに桃を斬ろうとした時、桃がわれて、
叫び声と共に、桃の中から男の子(?)が出てきました。
身の危険を感じたのでしょう…必死の形相です。


「わっ!?何だ?」

「桃から人が…これは一体どんなカラクリが…」

「カラクリじゃねーし…。」


桃から出てきた男の子(と言うよりは青年?)
は呆れ顔で近藤さんと山南さんを見ていました。


「ともかく…せっかくだから名前をつけようか?」

「じゃあ…桃から生まれた『桃太郎』で…」

「俺は永倉新八だ…。」

「じゃあ『桃八郎』で。」

「はあ!?」

「ああ、それはいいね!」

「よくねーよ!」


何やら揉めましたが、結局『桃八郎』で落ち着きました。



***



「で、近藤さん、山南さん。」

「何だい、桃八郎君?」

「……俺、鬼退治に行くから…。」


一息ついたところで永倉さん改め、
桃八郎は近藤さんと山南さんにそう言いました。


「お、早速行くのか!桃八郎君!」

「そうか…まあ無理しないで、気を付けて行くんだよ。」

「ああ、ありがとう。近藤さん、山南さん。」


桃八郎の突然の申し出でしたが、近藤さんと山南さんは暖かく見送ってくれました。
そして、一人鬼退治に向かう桃八郎の為に、山南さんは…


「桃八郎君、鬼退治に行くならぜひこのカラクリを…」

「いらない。」

「そう言わずに!」

「危ねェだけだし!てか!こういう時は『きびだんご』だろ!山南さん!」


山南さんはせっかくのカラクリを却下され、
少し不服そうでしたが、しぶしぶきびだんごを用意してくれ、
桃八郎はそれを持って鬼退治に出かけて行きました。



***



さて、鬼退治のため、鬼ヶ島を目指す桃八郎の前を一匹の犬が通りがかりました。


「こんにちは、桃…八郎?……桃太郎じゃなかったの?新八さん…?」

「俺に言うな…平助…。」


桃八郎の持っている旗を見て、犬の平助君は首を傾げましたが、


「まあいいや、きびだんごをオレにも一つ下さいな。」


と言いました。


「ああ、俺と鬼退治に行くならやるよ。」

「いいよ、任せて!」

「よし!行くぞ平助!」


犬、平助君が仲間になりました。

またしばらく行くと、今度は猿がやってきました。


「くそ〜…何で俺が猿なんだよ…。」

「そりゃ、似合ってるからだよ。左之さん。」

「うるせー!平助!」

「まあ、そんなこと良いから左之。」

「ああ、わかったよ…。」


犬と猿が少し揉めましたが、


「桃八、俺にもきびだんごを一つくれ。くれたら鬼退治に付き合ってやるからよ。」


と猿原田さんも言いました。


「おう、しっかりやれよ左之。」

「わかってるよ。」


猿、原田さんが仲間になりました。

仲間の増えた桃八郎一行はまた鬼ヶ島を目指しました。


「……後はきじだな。」

「ねぇ、桃八さん、左之さん。きじは誰かな?」

「さあ?俺は聞いてねぇぞ?」

「ここは最後だし、紅一点が良いな♪」

「あーそうだな…。」


最後の仲間、きじに皆の期待も膨らむ中…、


「あら〜皆中々可愛いじゃないの!」


聞こえてきた声に一同固まる。


「お・ま・た・せ〜vアタシが…」

「何か聞こえたかな?」

「幻聴だ、幻聴。」

「ちょっと!待ちなさい!!」


スタスタと通り過ぎようとした面々を鷲掴み、引き止めたのはキジ、山崎さん。


「幻聴とは失礼ね〜!せっかくアタシも協力に来てあげたのに!」

「あ〜やっぱりキジは山崎さんなんだ…。」

「現実はこんなもんだ…諦めろ…平助…。」

「何か言った?」


がっくりと肩を落とす犬と猿をキジが睨み付けたので、桃八郎は慌てて誤魔化しました。


「何でもねーよ!ほら、山崎!きびだんごやるから一緒に来てくれよな!」

「も〜そこまで言うならしょうがないわね!同行してあげるわ♪」

(((誰もそこまでは言ってない…。)))


キジ、山崎さんが仲間になりました。

微妙な感じではありますが、こうして桃八郎は無事に、
犬、猿、キジをお供にすることができ、改めて四人で鬼ヶ島を目指しました。



***



さて、鬼ヶ島目指している桃八郎一行ですが、
途中、鬼ヶ島の鬼の被害にあっている町を通りかかりました。


「よよよ……」


すると男の人が家の前で泣いていました。


「どうしたんだ?」


桃八郎が声をかけると、男の人は顔を上げ、桃八郎にしがみ付き事情を話しました。


「わしの大事な嫁さんが鬼にさらわれてしまったんじゃき!」

「あら、大変ね…。」

「それだけじゃないぜよ!
 この町の女子は殆ど鬼がさらっていっちゅう、この町は男しかおらんがじゃ!」


よよよ…と男の人がまた泣きだすと、騒ぎを聞き付けた町の人たちが出てきました。
本当に女性はいないようです。


「こりゃ本当に結構やばいのかもな…。」

「うん!女の人ばかりさらうなんて許せないよ!」

「よし!安心しな!オメーの嫁さんも俺たちが必ず助けるぜ!」

「おお!頼もしいぜよ!さすが桃八郎君!」


『よ!日本一!』

『がんばれー!桃八郎!』


こうして、桃八郎一行は町の人たちに見送られ、鬼ヶ島を目指しました。



***



そしていよいよ鬼ヶ島に到着しました。
どよ〜んとした暗い鬼ヶ島、いかにもと言った感じです。


「よっしゃ!いよいよ乗り込むんだな!」

「…でもいきなり正面からとか無謀じゃない?」

「う〜ん…よし、山崎。ちょっと様子を見てきてくれよ。」

「しょうがないわね〜。…高くつくわよ?」

「きびだんごはもうねぇよ。」

「そうじゃないわよ〜」

「おい…」

「ん?なんか言ったか?左之、平助。」

「え?オレ?何も言ってないけど…」

「俺も…」

「こっちだ…」

「「「わぁ!?」」」


ぼそぼそと相談していた桃八郎一行。
突然声をかけられ、驚いて振り返ると黒い髪の人が立っていました。
よく見ると頭に角があるようです。つまり……


「オメー!鬼ヶ島の鬼だな!」

「…そうだ。俺は黒鬼の斎藤一だ…。」

「黒鬼?」


まったく気配のなかった黒鬼、斎藤さんに桃八郎一行は驚き慌てましたが、
斎藤さんは特に桃八郎たちを攻撃しようと言う素振りは見せませんでした。


「何か用か?」

「え?」


それどころか、普通に話かけてきました。


「何か用かと聞いているんだ…。」

「俺たちは……オメーたちを退治に来たんだよ!」


桃八郎たちは少し拍子抜けしましたが、元来の目的を忘れるわけにもいきません。
慌ててそれぞれ臨戦態勢に入りました。


「退治?…俺たちが…何かしたか…?」

「とぼけんなよ!」

「町の女の人をさらったんでしょ!」

「町の…?……覚えはないが…。」

「はぁ?」


どうも要領を得ない黒鬼斎藤さん。
桃八郎たちもわけがわからなくなってきました。
とそこへ、


「あの…どうかしました?」


女の子が顔を出しました。
角はないようなので、どうやら普通の人間のようです。


…いや、別に…「あー!やっぱりいるじゃない!」

「おう!俺たちが来たからにはもう安心だぜ!」

「すぐ助けてあげるからね!」

「え?た、助ける?」


桃八郎一行は女の子に駆け寄り、安心させるように言いました。
が、女の子も不思議そうに首を傾げるだけです。そして、桃八郎が、


「おう!あの鬼を退治して…」


と黒鬼斎藤さんを指差すと女の子は、
慌てて斎藤さんの前に立ちふさがりました。


「そんな!乱暴はやめて下さい!」

「「え?」」


何故か黒鬼斎藤さんを庇う女の子。


「君は鬼の仲間なの?」

「私は…」


訳が分からず犬平助君が尋ねると、
今度は水色の髪の鬼の少年と、茶色の髪の女の子が出てきました。


「あれ?どうしたんですか?お客さんですか?」

「そんな雰囲気じゃないですよ、沖田さん。」


何とも呑気な水色の鬼を女の子が諫めています。


「あら、アナタ…鈴花ちゃん?」


水色の鬼と一緒に出てきた女の子に目に止め、
キジ山崎さんが話し掛けると女の子は驚いた顔をしました。


「梅さんの嫁のか?」

「何で知ってるんですか?」

「梅さんが君が誘拐されたって…」

「誘拐!?とんでもない!私は…」

「何をさわいでる!」


とその時、何かと押し問答している所へ、
厳しい声が投げ掛けられました。

そして…



『きゃーー!!』


と言う女性の悲鳴…?
と同時に出てきたのは紫色の髪の鬼。
威厳たっぷりの紫鬼さん、どうやら彼が首領で間違いでしょう。

そして聞こえてきた女性達の悲鳴に、
桃八郎たちはいきり立ちましたが…女性達の声は悲鳴と言うよりも…



『きゃー土方様〜


『今日も素敵ですわ〜


『黒鬼様も渋くて素敵


『沖田様!可愛い〜vv



「「「「…………」」」」

「「「「…………」」」」


女性達の黄色い声援に固まる桃八郎一行。


「……とりあえず…話は中で聞こう…入れ。」

「「「「……はい」」」」


紫鬼、土方さんに勧められるまま、鬼ヶ島、鬼の城へと入っていきました。



***



「町の女たちのことだが…」

「僕らが攫ったわけじゃないです。」

「勝手についてきただけだ…。」


お城に入ると、さっそく言い出した三人の鬼さんたち。
なるほど…三人並ぶと絵になる程美形です(笑)


「「「「………」」」」


さっきのこともあって、言葉もない桃八郎一行ですが、
一緒にお城に入ってきた女の子二人を見て、そういえば…と思い直し、
鬼三人衆に尋ねました。


「さっきの連中は良いとして…じゃあ、この二人は何なんだよ?」


桃八郎の質問に、鬼三人衆は顔を見合わせると、首領の紫鬼土方さんが口を開きました。


「こいつらは別だ。しばらくここで面倒を見ている。」

「面倒?」

「でも、鈴花さんは梅さんがいるでしょ?どうしてここに?」


土方さんの意外な言葉に首を傾げる犬平助君。
すると鈴花さんはむっと不機嫌そうな顔をして、


「あんな人知りません!」


と、そっぽを向いた。


(ちょっと旦那さんと喧嘩中で…家出みたいなものなんですよ。)


水色鬼の沖田さんが桃八郎一行に耳打ち。


(((痴話喧嘩かよ…;)))


鈴花さん、どうやら梅さんと喧嘩をしてしまい、甘味屋さんでやけ食いをした挙句、
気持ちが悪くなり倒れていた所をもう一人の女の子に助けられ、その縁でしばらくここにいるらしい。
経緯を聞いて半ば呆れる桃八郎一行。


「それじゃあ、そっちの子は何なの?」


キジ山崎さん、今度はもう一人の女の子の方へ視線を向けました。


「あの…私は…」


橙がかった茶髪の髪の女の子は『』と名乗り、
行き倒れていた所を黒鬼斎藤さんに助けられたらしい、
その恩を返すため、しばらくここで恩返しをしているとか。

どうやらこの鬼三人衆、全然良い人(?)たちのようです。


「なんだ…別に退治することねぇじゃねぇか…。」

「ホントね〜何か拍子抜けしちゃったわ。」


思いもよらない結果に、桃八郎一行も脱力気味。
とはいえ、こうして桃八郎たちのように鬼退治にやってくる輩は少なくなく、
話しても分かってもらえない場合は、鬼達も相手を倒すしかなく、
戦ってきたこともあるそうです。

そんな鬼達を気の毒に思った桃八郎は、
一度家に帰ると近藤さんと山南さんに相談し、
桃八郎と鬼たちはみんなで一緒に暮らすことにしました。

桃八郎たちと近藤さんと山南さん、
そしてまさしく鬼人のごとし実力を持つ鬼三人衆はその強さを発揮し、
町の治安を守る組織となり、「新撰組」と名乗りました。

そして、鈴花さんは梅さんの所へ帰り、
も、迷子になったを探しに来てくれた兄上のもとへ戻り旅を続けましたが、
鈴花さんもも、時々、桃八郎や鬼たちに会いにも来て、遊びに来たりもして、
それからは、みんな仲良く幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。



***



キャスト

近藤さん・・・近藤さん
山南さん・・・山南さん
桃八郎・・・永倉さん
犬・・・平助君
猿・・・原田さん
キジ・・・山崎さん

紫鬼・・・土方さん
水色鬼・・・沖田さん
黒鬼・・・斎藤さん

町の男性・・・梅さん
奥さん・・・鈴花さん
女の子・・・さん




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2008.01.30