-かぐや姫-



むかしむかし、あるところに、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。


「ちょっと、私はまだおばあさんじゃないですよ!」

「わしもまだぴちぴちじゃき!おじいさんとはヒドイぜよ!」


……梅さんと鈴花さんという夫婦が住んでいました。


「おまんと夫婦じゃなんて、照れるの〜鈴花さんvV

「も、も〜梅さん!///

「ささ!夫婦なんじゃき、遠慮はいらんぜよ!鈴花さん!あつい『きす』を…。」

「梅さん!!///


……え〜、梅さんは竹籠職人で、今日も竹藪へ竹を取りに行きました。


「さあさあ!鈴花さん!」


……竹を取りに竹藪へ行きました。


「鈴…」

「いってらっしゃいv梅さんv

「…………わかったぜよ。」


え〜、梅さんはやっと竹を取りに竹藪へ行きました。



***



「あ〜、せっかく鈴花さんと夫婦になれたっちゅうに『らぶしーん』はないんじゃか〜。」


……梅さんがブツブツ言いながら竹を切っていると、
何やら竹藪の奥に光る竹がありました。


「なんじゃ、珍しい竹じゃき?」


梅さんは不思議に思いながらも気になったので、
光る竹を切ってみました。


「!!…これは、」


すると、竹の中には輝くように可愛らしい女の子が入っていました。


「おお、これはまためんこい女子じゃき。」


少し躊躇いましたが、赤ん坊をこんな所に放っていくわけにもいきません。
梅さんはその赤ん坊を家に連れて帰ることにしました。

梅さんが連れ帰った赤ん坊に鈴花さんも驚きましたが、
やはり放っておくことはできないということになり、
鈴花さんと梅さんはその女の子を『かぐや姫』と名付け大切に育てました。



***



かぐや姫を見つけてからと言うもの、
梅さんが竹を切ると中に小判や宝物がはいっていて、
梅さんと鈴花さんは裕福になり、お家も立派になりました。


「……私たち貧乏だったんですか?」

「…まあ…竹籠だけじゃ儲からんき。」


……そして、かぐや姫はすくすく成長し、
それは美しい娘になりました。


「おお、がんばって育てたかいがあるのう。鈴花さん!」

「はい、こんなに立派になってよかったです!」

「お二人のお陰です。」


そして、美しく成長したかぐや姫を一目見ようと
大勢の人が詰め掛け、結婚を申し込みました。


「あ”〜!もう、しつこいぜよ!」

「かぐや姫はどこにも嫁にはやりません!」

「二人とも…落ち着いて下さい;」


梅さん、鈴花さんの努力のかいもあって、
大体の人が諦めましたが、町の良家の五人の青年は諦めず、
かぐや姫に結婚を申し込みました。


「俺が必ず幸せにするぜ。」

「オレが一生守るよ!」

「ぜってぇ苦労はかけさせねぇ、幸せにするぜ!」

「この先ずっと、俺と共にいてくれ。」

「絶対に後悔はさせない、俺が一生守りぬく。」


かぐや姫に結婚を申し込んだのは、
石作皇子原田さん、車持皇子藤堂さん、
右大臣阿倍御主人永倉さん、大納言大伴御行土方さん、
そして、中納言石上麻呂斎藤さんの五人でした。

五人の熱心さに折れた梅さんと鈴花さんは、


「いずれかぐや姫も結婚はせんとあかんぜよ。
 じゃったらこの中から決めたらいいき。」

「そうですね。みんな家柄もしっかりしていますし、まだ安心ですよね。」

「さあ、さん!……じゃなかった;かぐや姫!」

「誰と結婚するんじゃ!」

「ええ!?…えっ…と;」


梅さんと鈴花さんが乗り気になってしまったので、
無下に断ることができなくなってしまったかぐや姫。

すっかり困ってしまいましたが、悩んだ挙げ句、


「あの…では、私が言ったものを持ってきて下さった方と結婚致します。」


と言いました。


「何を持ってくれば良いんだ?」

「はい、えっと…。」


かぐや姫はそれぞれ、
石作皇子原田さんには仏の御石の鉢、
車持皇子藤堂さんには蓬莱の玉の枝、
右大臣阿倍御主人永倉さんには火鼠の裘、
大納言大伴御行土方さんには龍の首の珠、
中納言石上麻呂斎藤さんには燕の子安貝、
を持ってくるように言いました。

どれも珍しい宝物ばかりでみんな一瞬怯みましたが、


「あの…ご無理はなさいませんよう…お気を付け下さい。」


かぐや姫がにっこり笑ってそう言うと


「よっしゃ!絶対に俺が最初に持ってきて、お前を嫁にもらうぜ!」

「オレも負けられないよ!」

「オメーらにだけは勝つぜ!」


みんな俄然やる気になり、元気良く出かけて行きました。


(…すみません、みなさん;)


無茶な注文とわかっていて言い渡したかぐや姫は心の中で謝罪しました。



***



数日後、
最初に宝物を持って屋敷へやってきたのは、石作皇子原田さん。


「見ろ!これが注文の『仏の御石の鉢』だぜ!」


そう言って、ドン!とかぐや姫の前に鉢を置きました。


「原田さん、丁寧に扱わないと壊れますよ…;」


鈴花さんがそんなことを言いながら原田さんを見たとき、
鉢を手に取り見ていたかぐや姫が困ったように苦笑いしました。


「どうかしたき?かぐや姫?」


それに気付いた梅さんがかぐや姫の持っていた鉢を覗き込むと…、


『石焼きビビンバ−バビバ亭』


「「「「…………」」」」

「あははは!偽物掴まされたな!左之!」


みんなが言葉を失っていると石作皇子原田さんの後ろで大笑いしている人物が。


「げっ!?新八!」


右大臣阿倍御主人永倉さんでした。


「ま、オメーらしいっちゃらしいが、普通気付くだろ。」

「う、うるせーな!」


裏にデカデカと書かれている店名。


((……確かに;))


呆れ顔で見ていた、梅さんと鈴花さんは大きく頷くと、


「「石作皇子原田さん失格〜!」」


と叫びました。


「ちょ!ちょっと待った;」

「ダメです、間違った物を持ってきたから失格です。次、永倉さん。」

「おうよ!」


まだ必死に弁解している原田さんを梅さんが宥めている間に、
かぐや姫と鈴花さんは永倉さんの持ってきた『火鼠の裘』を見ました。


「どうだ?本物だろ?」


永倉さんは自信満々で言いましたが、かぐや姫は、


「もし、本当に本物の火鼠の裘なら、決して燃えないはずですが…。」


と言いました。


「なら、試せばいいぜよ。」


かぐや姫の言葉に梅さんがロウソクを持ってきました、
そして火鼠の裘に近付けると…。



ゴウッ!!



「「「「…………」」」」


『火鼠の裘』はあっという間に灰になってしまいました。


「あ、あの……;」

「残念でしたね、永倉さん。」

「永倉くんも失格ぜよ。」


がっくりと肩を落とす永倉さんにかぐや姫は申し訳なさそうな顔をしましたが、
右大臣阿倍御主人永倉さんは鈴花さん、梅さんにあっさり失格を宣言されました。



***



その日の午後、次にやってきたのは、車持皇子藤堂さん。


「さ、言われたとおり『蓬莱の玉の枝』を持ってきたよ!」


木箱に入った玉の枝を差し出しました。


「……おお!」

「綺麗ですね…。」


車持皇子藤堂さんの持ってきた『蓬莱の玉の枝』確かに美しく
本物そっくりでしたが、かぐや姫は何か違和感を感じました。

とはいえ、先の原田さんのようなわかりやすい証拠もなければ、
永倉さんの時のように確かめる手段もありません。
かぐや姫が困っていると…。


「すいませ〜ん!車持皇子、こちらにおいでと伺いましたが〜?」


外から大きな声が藤堂さんを呼びました。


「!!」


藤堂さんは慌てて外へ駆け出し、気になった鈴花さんが着いていくと、


「すみません、車持皇子。玉の枝の制作代金を頂きたいのですが…。」


と、屋敷へやってきた人が藤堂さんに言っていました。


「平助くん…。」

「わ!す、鈴花さん…;」

「なんじゃ、偽物じゃったか。」


梅さんもやってきて、藤堂さんの嘘はばれてしまい、
車持皇子藤堂さんも失格を言い渡されたのでした。



***



その翌日。


「大変じゃき!大納言大伴御行土方さんが!」


血相を変えた梅さんが大慌てで帰ってきました。
どうやら『龍の首の珠』を取りに行った土方さんが怪我をしてしまったようです。
そのことを聞いたかぐや姫達は慌てて大納言大伴御行土方さんの家へ向かいました。



***



「大納言大伴御行、客人が来られましたが…?」

「……今は一人にしてくれ。」


幸い怪我は大したことはありませんでしたが、
龍の首の珠を取ってこれなかったことで、
土方さんは落ち込んでいました。

そんな土方さんの様子を、従者も心配していたので、
躊躇いがちに口を開きました。


「ですが…」

「なんだ?一体誰が来たと…」

「あ、あの…土方さん…。」

「!!……!?」

「土方くん、かぐや姫ぜよ。」

「あ、ああ…///そ、そうだな…///


かぐや姫の突然の来訪に土方さんは驚きましたが、
一先ずみんなを部屋に招き入れました。


「あの、大丈夫ですか?」

「ああ、大したことはない。この程度…。」

「けど、土方くんも失敗したき、失格っちゅー…」

「梅さん!!」


バキッ!


鈴花さんは梅さんを殴り飛ばすと、引きずって部屋を出ていきました。


「「………;」」

「……すみませんでした、土方さん。」

「ん?何がだ。」

「危険な目にあわせてしまって…。」

「…何、大丈夫だ。」

「でも…」

「それとも…ここで、平気ではないと言えば、お前は俺と一緒になってくれるか?」

「…え?」

「………」


突然の言葉にかぐや姫は驚きましたが、
土方さんの真剣な表情に申し訳なさそうに顔を伏せました。


「……それは…」

「…すまない、こんなことを言うのは卑怯だな。才谷さんの言うとおり、俺は失格だ…。」


言葉につまったかぐや姫に、土方さんは自嘲気味に笑うとそう言いました。


「ごめんなさい…土方さん。」

「いや…。」


辛そうに見えた土方さんにかぐや姫は必死に言葉を続けました。


「あの…、土方さんのお気持ちはとても嬉しいです。でも…!」


そこまで言うと、ふいに土方さんがかぐや姫を抱き締めました。


「……もう、そのぐらいで良い。」

「……土方さん…。」

「お…かぐや姫……幸せになれ…。」

「…ありがとうございます。」


かぐや姫は土方さんにお礼をいうと、
そっと部屋を出ていきました。

こうして、大納言大伴御行土方さんも失格になりました。



***



「これで残りは中納言石上麻呂斎藤くんだけじゃな。」

「そうですね。」


そしてまたその翌日、梅さん、鈴花さん、かぐや姫の三人は、
とうとうあと一人となってしまった中納言石上麻呂斎藤さんの話をしていました。


「斎藤さんは大丈夫でしょうか…。」

「う〜ん、今頃どこにいるんじゃか…。」


かぐや姫と梅さんが心配そうにそう言った時。


「ここにいるが?」


「「「わぁ!?」」」



突然背後から声がして、驚いて三人が振り返ると、
中納言石上麻呂斎藤さんが立っていました。


「さ、斎藤さん…;」

「斎藤くん、いつからいたんじゃ?」

「今来た所です。」

「そ、そうじゃか…;」


驚いている三人を見て、斎藤さんは不思議そうに首を傾げましたが、
かぐや姫の前に行くと何か手渡しました。


「言われたものを持ってきた。」

「あ、はい…。」

「斎藤くんはなんじゃったか?」

「…確か、『燕の子安貝』ですよ。どう?かぐや姫?」

「えっと…。」


斎藤さんから燕の子安貝を受け取ったかぐや姫は
しばらく色々眺めて調べていましたが…、


「!………;」


突然顔色が変わり、焦ったような顔になりました。


「どうしたの?かぐや姫?」


鈴花さんが不思議に思い尋ねると、かぐや姫はゆっくり顔を上げて斎藤さんを見ました。
すると、斎藤さんは勝ち誇ったような顔になり、


「本物だろう?」


と言いました。


「「え!?」」


鈴花さん、梅さんが慌ててかぐや姫の方を振り返ると、
かぐや姫はどうしたら良いのか困ったような顔をしましたが、
小さく首を縦に振りました。


「「え゛え゛〜〜!?」」

、俺と結婚してくれるな?」

「あ、あの…;」


斎藤さんはかぐや姫に詰め寄ると真剣な顔で告白し、
かぐや姫は大慌てです。


「本物持ってきてどうするんですか!斎藤さん!」

「?本物を持ってくれば結婚しても良いと言ったのはこいつだろう?」

「それはそうじゃが…;実際の中納言石上麻呂は失敗するはずじゃが…?」

「俺はそんなへまはしない。」

「そ、それはそうかもしれませんが…;それだと話が…;」


鈴花さん、梅さんも大慌てです。
どうしたら良いかわからず、すっかり困ったムードが漂っている中、
斎藤さんもそれを察したのか、かぐや姫に向き直ると、


「…お前は俺が嫌いか?」


と寂しそうな顔で尋ねました。
斎藤さんの言葉に慌ててかぐや姫は首を振りました。


「いえ!まさか!そんなこと…」


激しく否定したかぐや姫に、
斎藤さんは嬉しそうな顔になるとかぐや姫の手を取り、


「なら、俺と結婚してくれるな?」


ともう一度言いました。
手を握られ、間近で真剣な表情できっぱりと告白され、
かぐや姫はもう真っ赤です。


「…………っ〜〜///


すっかり混乱気味ではありましたが、
かぐや姫とて斎藤さんに対し、好意がないわけではありません。

斎藤さんの真剣な押しに負け、かぐや姫は小さく頷きました。


「…………///

「本当か?」

「………はい///

「ありがとう、必ず幸せにする。」


こうして、かぐや姫は中納言石上麻呂斎藤さんと結婚しました。


「かぐや姫が結婚したら、わしらの出番がなくなるぜよ!」

「まあ良いじゃないですか、梅さん!せっかくおめでたいんですから!」

「……う〜ん、まあのぅ…。あ!そうじゃか!」

「?」

「かぐや姫がいなくなるのは寂しいが、これでゆっくり鈴花さんと
 『らぶらぶ』な生活がおくれるちゅうもんじゃき!」

「!!……///もう!梅さんの馬鹿ーー!///


こうして、鈴花さんと梅さんも幸せに暮らしていました。



***



それからしばらく、かぐや姫と斎藤さんは仲良く暮らしていました。

けれど、ある日からかぐや姫は夜、
月を眺めては寂しそうにしていることが多くなりました。
その様子に気付いた斎藤さんはかぐや姫に尋ねました。


、どうかしたのか?」
(かぐや姫だっつーの!・笑)

「あ、斎藤さん…。」

「……ハジメ。」

「あ、え、っと……はい、///ハジメさん…///


小声ながらも名前を言ってくれたかぐや姫に、
斎藤さんは満足そうに笑うと話を続けました。


「何かあったのか?」

「え?どうしてですか?」

「どこか落ち込んでいるように見える。」

「…そんなこと。」

「何があったんだ?」

「…………」


すべて承知だとでも言うように優しく言ってくれた斎藤さんに、
かぐや姫は躊躇いがちに口を開きました。


「……実は、私は次の満月に月に帰らなくてはいけないんです。」

「……月に?」

「……はい。」


かぐや姫は自分が本当は普通の人間ではなく、
月から来たことを話しました。
そして、月へ帰らなくてはいけないことも…。


「こんな話、信じて貰えないかもしれませんが…。」


斎藤さんは信じたくない気持ちもあり、正直信じるか迷いましたが、
真剣なかぐや姫の表情に嘘はない。と判断し、首を横に振りました。


「いや、信じよう…。」

「…ありがとうございます。」

「だが…」

「はい?」


斎藤さんはそこで言葉を止めると思いっきりかぐや姫を抱き締め、


「どんなことがあっても、俺はお前を放しはしない。月に帰すつもりはない…。」


そう呟きました。


「斎藤さん……。」

「…ハジメ。」

「…ありがとうございます。ハジメさん…///


かぐや姫は照れながらも、そっと斎藤さんの背中に手をまわし抱き返しました。
かぐや姫もできるなら月へ帰らず、ずっとこの方の傍にいたいと、
斎藤さんのことが本当に好きだと…思いながら…。



***



その翌日、斎藤さんは帝の所へ参上し、
事情を話して家の警備を頼みました。


「へ〜そりゃ、大変だね。」

「月の使者か…興味深いね。」

「どんな人が来るのか楽しみですね。」


帝の近藤さん、大臣の山南さん、側近の沖田さんは、
斎藤さんの話を真剣に受け取ってくれて、警備をすることを約束してくれました。

そして満月の日…。


「あ、貴方がかぐや姫ですか?」

「あ、はい…初めまして…。」

「噂どおり美しい方ですね。」

「え…///

「沖田……。」

「ダメだよ〜総司、かぐや姫にちょっかいを出したら斎藤くんに斬られるよ。」

「はいはい、わかってますよ。」


帝の近藤さん始め、山南さん、沖田さんを含む警備の人たちがやってきてくれました。
これだけの人数なら、と皆安心していましたが、かぐや姫だけは浮かない顔で、
斎藤さんはそのことに気付いていました。そして密かにある決心をしていました…。



***



夜になり、満月が顔を出し、皆緊張して構えました。
辺りがしんと静まり返った時、月がうっすらと光を放ったかと思うと、
突然辺り一面がまばゆい光に包まれました。


「わっ!」

「何だ、一体!?」


皆光にあてられ目も開けられない状態です。
それでも斎藤さんはかぐや姫を放すまいと、ぐっと手を握り締めました。


「は〜いvV


光が納まったと思うと、
光の車とその前に紫色の髪をした美しい女性(?)が立っていました。


「何?その(?)は?」

「山崎さん…。」

「やっほvかぐや姫v迎えに来たわよ♪」


山崎さんと呼ばれた人物は笑顔を見せるとかぐや姫に歩み寄りました。
かぐや姫を守るために集まった警備の人たちは止めに入らなければと思いながらも、
何故か金縛りにあったように体が動きません。


「くっ、どうなってんだ?山南さん?」

「わからないけど…さっきの不思議な光のせいかな…。」

「動けないんじゃどうしょうもないですね…。」


みんなが困っていた時、
かぐや姫と山崎さんの間に立ちはだかったのは斎藤さんでした。


「あら、しぶといわね。」


かぐや姫の傍にいたからか、手を握っていたからか、
斎藤さんは動けるようです。


「こいつを渡すわけにはいかない…。」


斎藤さんは山崎さんを真っすぐ見ていいました。


「あら、男らしいじゃない。でもダメよ、かぐや姫はもともと月の人よ。
 こっちで生きていくことなんてできないのよ。」


山崎さんは少しも怯まずそう答え、
山崎さんの言葉にかぐや姫は俯きました。


「……どうしても…無理なのか?」

「……はい。私も、できることなら、さ…ハジメさんとずっと一緒にいたいです。でも…。」


哀しそうにそう言ったかぐや姫に、山崎さんも複雑な表情です。


「アタシだって、できるならかぐや姫の気持ちを汲んであげたいわ。でもこれは決まりなのよ。」


山崎さんもかぐや姫も哀しそうな、
申し訳なさそうな顔をして口を閉じてしまいました。

そんな中、斎藤さんはほんの少し空へ視線を投げると、
ぽつりと言いました。


「……なら、俺が月へ行くのはダメか?」

「「…………え?」」


突然の発言、思いもよらない言葉に、
かぐや姫と山崎さんはおもわず聞き返しました。


「今…なんて言ったの?」

「こいつがここに残れないのなら、俺が月に行くことはできないのかと聞いたんだ。」

「で、でも、そんなこと…」

「俺はかまわない。おまえがいないのなら、ここにいる意味もない。」

「斎藤さん…。」

「……俺もおまえと…ずっと一緒にいたい。」


斎藤さんはかぐや姫を抱き締めて、そう言いました。


「あ〜もう!わかったわよ!
 じゃあハジメちゃんも一緒に連れていくわ!」


かぐや姫と斎藤さん。
二人の気持ちを痛いほど感じた山崎さんは、
斎藤さんも月に行くことを許してくれました。

こうして、かぐや姫と斎藤さんは月で仲良く幸せに暮らしました。

めでたし、めでたし。



***



キャスト

かぐや姫・・・
おじいさん・・・梅ちゃん
おばあさん・・・鈴花さん

石作皇子・・・原田さん
車持皇子・・・藤堂さん
右大臣阿倍御主人・・・永倉さん
大納言大伴御行・・・土方さん
中納言石上麻呂・・・斎藤さん

帝・・・近藤さん
大臣・・・山南さん
側近・・・沖田さん

月の使者・・・山崎さん




戻る




2007.05.23