-ふしぎの国の泰衡さま-




ここは奥州平泉。ある晴れた日。
この地を収める総領、藤原泰衡さまは今日も忙しくお仕事をしていました。

いつもと変わらぬ時間…そのはずが…


「……ここは…何処だ…?」


ふと顔を上げると、何故か泰衡さまは大草原の真っ只中に…。
今見ていた書物も、座っていた膳もありません。


「???」


わけがわからない泰衡さま。
不思議に思っていましたが、何もない大草原。

傍には大きな木があるものの、
ポツン…と一人取り残された感覚に泰衡さまは不安を覚え、
辺りを見回しました。


「別に不安など…。」


そして聞こえていないはずのナレーションにまた(※)ツッコんでいました。
※過去の昔話ネタ参照。


「………馴れ?」


と、そこへ何かが走ってきました。


「ああ、私としたことが遅れてしまいました…!」


そしてそのまま泰衡さまの前を通り過ぎて行きました。
泰衡さまの前を通り過ぎたのは燕尾服を来て大きな時計を持っている、
うさぎの耳が生えたうさぎ風な青年…?


「…銀!」


走り去ったうさぎ青年を見て、泰衡さまは思わず声をあげました。
どうやら走り去ったうさぎ青年は泰衡さまの知り合いにそっくりだったようです。


「おい!待て!銀!」


泰衡さまは必死で声をかけましたが、残念ながら聞こえていないのか、
うさぎ青年はどんどん行ってしまいます。


「くそっ!」


仕方なく後を追い掛ける泰衡さま。


「しろが…!?」


必死に後を追いましたが、突如うさぎ青年は泰衡さまの前から姿を消しました。
そのことに泰衡さまが驚いていると、何か足元が軽い感触。


「?」


見ると地面がなくなっています。


「!?」


うさぎ青年は消えたわけではなく、この穴に落ちたようです。
足元を見ていなかった泰衡さまも当然真っ逆さまです。


「わかっていたなら先に言えーー!!」


泰衡さまは叫び声と共に穴の中へ消えていきました。



***



「…うっ…」


穴へ真っ逆さまに落ちた泰衡さま。
ようやく気が付いたようです。


「……くっ!覚えていろ貴様!」


やり場のない怒りをナレーションに八つ当りしつつ、泰衡さまは辺りを見回しました。
穴の中は何やら不思議な雰囲気の部屋になっています。


「??」


洋風な部屋に馴染みがないため落ち着かない泰衡さまですが、
ふと足元を見ると小さな扉があることに気付きました。


「……足元?」


覗き込むと…中に何が見えますか泰衡さま?


「……!銀!」


どうやら先程のうさぎ青年がいたようです。


「おい!ここから出る方法はないのか!」


残念ですがこの部屋の出口はその小さな扉しかないようです。


「何だと!?ならここから出る方法は…」


おや、泰衡さま向こうにテーブルが。


「ん?何と言った?」


西洋のお膳です。上に何かあるようです。
泰衡さまは近付き、テーブルの上の物を手に取りました。

テーブルの上にはビンがあり、ラベルには『私を飲んでvと書いてありました。


「…………」


泰衡さまはとりあえずビンの中身を飲んでみました。


「……こんな怪しげなもの飲めるか。」


飲みました。


「だから飲まんと…」

『飲んで下さい。話が進みません。』

「……」

『大丈夫です。死ぬことはありません。』

「……」


と、ビンのラベルの文字が変わりました。
泰衡さまのせいでビンも大変です。


『さあ、早く私を飲みなさい』

「……」


ビンの説得に負けて、泰衡さまは少しだけビンの中身を口にしました。
すると…


「!?」


泰衡さまの体は見る見る小さくなりました。


「おい!どうなっている!騙したのか!」


ビンは死ぬことはありませんと言った(?)だけで、
小さくならないとは言ってません。
騙したなんて言い掛かりにも程があります。


「貴様は黙ってろ!」


泰衡さまは取り乱し、また聞こえていないはずの声(ナレーション)に文句を言っていましたが、
落ち着いて考えるとこれであの小さな扉を通ることができます。


「!」


ようやく気付いた泰衡さまはとりあえず扉に近づいて行きました。


(……納得はいかんが…。)


そして扉に手を掛けます。


「…………ん?」


が、扉には鍵がかかっているようです。


「知っていたなら先に言え!!」


しかも鍵はさっきのテーブルの上にあったはずです。


「何っ!?」


どうやら泰衡さまは気付いていなかったようで、注意力散漫です。


「……で、どうする?こんな体では…。」


テーブルの上の鍵を取るのは無理ですね。


「だからどうしろと!」


だから注意力散漫だと…。


「〜〜!」


おっと、失言でした。
私はあくまでもナレーションですので、会話は厳禁です。


「何をいまさら…」


苛立っていても仕方ありません。
一先ず落ち着いた泰衡さまは足元を見ました。
足元には何やら小箱が。


「ん?」


拾って開けてみると、中にはクッキーが入っています。


「くっきー?」


西洋のお菓子です。
泰衡さまはそのクッキーを一口食べてみました。


「またおかしなものを…」


そうです、お菓子です。
さあ、クッキーを食べた泰衡さま。今度は…。


「……!!」


天井に頭をぶつけるのではと思う程大きくなりました。


「○▲□×!?」


びっくりして言葉も出ないようですね。
でも、これでテーブルの上の鍵を取ることができ…


「おい!そんな悠長な事を言っている場合ではない!!」





「あそこを見ろ!」


あ…


「どうするんだ!」


えっと…。コホン。
巨大化した泰衡さまが暴れたせいで

「俺のせいにするな!!」

部屋の端の壁に穴があいて水が漏れだしています。

このままでは泰衡さまは溺れてしまいます。


「○▲□×!?」


巨大化したままでは脱出もできません。
泰衡さまは先程の小瓶の中身を再度口にしました。


「何?小瓶…だと?あれは…」


大丈夫です、飲んで下さい。


「また小さくなるだけだろう。余計に危険だと…」


大丈夫です…。


「…………!」


小瓶の水を飲み、再度小さくなった泰衡さまは丁度ビンの中に入り、
そのまま流され、扉の鍵穴から部屋を出ることができました。



***



しばらく流された泰衡さまは何やら動物たちが集まっている場所へ流れ着きました。
ビンから這い出ると泰衡さまは元の大きさに戻りました。


…が……何やら顔色が大変なことになっていますが…。


「……|||


…船酔い(?)ですか…。


「…黙れ。」


ふらふらしている泰衡さまの所へ焚き火を囲っていた動物がやってきました。


「その…大丈夫か…?」

「船酔いならこれを飲みなさい。」


紫色の髪にオレンジの着物を着たウサギが心配そうに泰衡さまの様子を伺い、
金色の髪の天狗が何やら泰衡さまに差し出しました。


「…何だ?」

「船酔いの薬だ。」

「先生の薬はよく効く…辛いなら、飲んだ方が良い…。」

「……」


二人の言葉に、最初は警戒していた泰衡さまでしたが…


「……うっ…;」


船酔いは相当らしく、素直に薬を受け取って飲みました。


「…………」


どうやらちゃんと効いたようです。

さすが先生!


「…………」


泰衡さまはちゃんとお礼を言いました。


「……」


言いましょう。


「…………すまない…。」


お礼?


「ところで、銀…いや、時計を持ったウサギを見なかったか?」

「「ウサギ?」」


泰衡さまはウサギさんと天狗さんにそう尋ねると二人は顔を見合わせました。
二人はしばらく考え、


「時計を持っていたかはわからないが…」

「この先の家にウサギが住んでいる。気になるのなら、行ってみなさい。」


そう教えてくれたので、泰衡さまは二人にお礼?を言って先へ進みました。



***



「ここか…?」


しばらく歩いていくと、ピンク色のそれは可愛らしい家がありました。


「…悪趣味な…」


……泰衡さまが門に手をかけると、どうやら鍵は開いているようです。

泰衡さまは無言で中に入り、(不法侵入です)
様子を伺いました。(人権侵害です)


「……何か言ったか?」


家の中に人の気配はしませんが、どうやら庭には誰かいるようです。


「……そうか。」


泰衡さまは庭に回ってみることにしました。


「おや?お客さんですか?」

「めずらしいな。」


「って、野郎か…残念。花の姫君ならよかったのに。」


庭には帽子をかぶった男性と、
オレンジの髪のウサギと、
赤い髪のねずみがいました。


「ウサギ…はお前か…九郎…。」


どうやらこの家に住んでいるウサギと言うのは彼のことのようです。


「?」


探していた時計ウサギさんではなかったことに、
泰衡さまががっかりしていると…。


「貴方もご一緒にお茶をどうですか?」


帽子の男性が泰衡さまにお茶を出してくれました。

ただ…。


「……」


お茶は何とも表現しづらい不気味な色で、おまけにドロドロしています。
正直…飲み物なのか、飲めるものなのかも疑問に思える代物です。


「何のつもりだ。」


明らかに不機嫌な顔をした泰衡さまに赤いねずみが答えました。


「帽子屋は薬師でね。」

「また…新しい薬か…?;」


オレンジのウサギも青い顔で続けます。
そんな中、帽子屋さんは爽やかな笑顔で返しました。


「嫌ですね。貴方がイライラしているようだから、
 リラックスできるお茶を出してあげてるだけじゃないですか?」


物凄く爽やかな、輝く笑顔なのに、背筋が寒くなるのは何故でしょう…?

泰衡さまは帽子屋さんのお茶を丁重に断り、
一番話がわかりそうなオレンジのウサギに時計ウサギのことを尋ねる、
早々と家を後にしました。


「あ〜、俺たちの出番もう終わり?」

「慌ただしい人ですね。」


泰衡さまが去っていったお家ではそんな話がされていました。



***



お茶会の難を逃れた泰衡さま。
ずんずん歩いていると森の中に入っていきました。

それでも歩いていると、森は段々と暗くなり…。


「…………」


…………迷いましたか?


「!!」


図星ですか?


「煩い!!」


道に迷ってしまった泰衡さま。


「だから迷ってなど…!」


森には動物も見当たらず、誰かに聞くこともできません。


「だから…!」

「何だ…さっきからブツブツと…おかしな奴だな…。」

「!!」


おや、誰もいないと思っていましたが誰かいたのでしょうか?
声が聞こえたのは木の上で…。


「随分大きな独り言だ…。」


銀髪の猫が笑っていました。


「何だ…貴様…」

「やれやれ…随分と口の悪い男だな…俺は平…」

「違う!俺たちはチシャ猫なんだよ!」


銀髪の猫が答えようとした所に今度は青色の髪の猫が表れ、
銀髪の猫に激しい突っ込みを入れました。


「ちしゃ猫…?」

「……だそうだ…ククッ…相変わらず激しいな…重盛兄上は…。」

「…………お前が言うとなんかいかがわしいからその言い方やめろ。」

「ククッ……つれない兄上だ…。」


驚いている泰衡さまは半ば呆気に取られて二人のやりとりを見ていましたが、
青色の猫が思い出したように泰衡さまに声をかけました。


「そうだ、お前時計ウサギを探してるんだろ?」

「…何故そのことを…?」

「向こうで帽子屋たちに聞いた。時計ウサギならこの先の女王の城に行ったぜ。」


そして、青色の猫は泰衡さまにそう教えてくれました。


「この先?」


泰衡さまは猫が指差した木に目を向けます。


「その中に道があるんだよ。知盛。」

「人使いの荒い兄上だ…。」


青色の猫は銀髪の猫に声をかけ、銀髪の猫はめんどくさそうに答えたましたが
木の上から飛び降りると何処からか刀を取出し、泰衡さまの目の前の木を斬り付けました。


「!」


木は激しい音を立てて倒れ、その後ろから道が表れました。


「な?あるだろう?」

「まったく面倒な道だ…。」


猫たちは平然としていますが、
あまりに強引なやり方に泰衡さまはかなりびっくりです。


「大丈夫だ、その木はそのうち元に戻るから気にしなくて良いんだよ。
 ほら、さっさと行かないと道が閉まるぞ。」


びっくりしている泰衡さまに青色の猫はそう言い、
泰衡さまは二人にお礼?を言うと木の中の道を歩いていきました。


「さて…もう一眠りするか…。」

「お前寝てばっかりだな…。……いつものことだけど…。」



***



木の中の道をずんずん歩いていくと、青色の猫の言う通りお城が見えてきました。
庭に花がいっぱい咲いているお城です。


「これは……薔薇か…。」


お城の庭に咲いているお花は白い薔薇のようです。
ただ…


「ん?何だこれは…?」


何だか変な色の薔薇があります。
変というか…、


「……白いものに色をつけてるのか…?」


白い薔薇をペンキで赤くしたようですね。
見れば向こうにその作業をしている人がいるようです。

泰衡さまは彼らに話を聞いてみました。


「…………聞けば良いんだろう…聞けば…;」

「あれ?誰か来た…。」

「ん?」

「え?」


薔薇に色を塗っているのは緑色の髪のトランプ模様の服を着た男性二人と、
女の子のように可愛らしい男の子でした。


「……何をしているんだ?」


泰衡さまが声をかけると、女の子のように可愛らしい男の子が答えました。


「バラを赤くしてる。」

「…それは見ればわかる。何故そんなことをする必要がある?」


泰衡さま、小さい子にも容赦なしです。


「それがね〜、間違っちゃったんだよね〜。」


濃い緑の髪の人が答えました。


「本当は赤い薔薇を植える予定だったんですが、
 どうやら間違えて植えてしまっていた様で…。」


薄い緑の髪の青年も答えます。


「だから色を塗りなおしている。」


そして女の子のように可愛らしい男の子
(いい加減長いので以下男の子)も付け足しました。


「………面倒なことだな…。」


泰衡さまは半ば呆れて三人を眺めていました。


「いや〜でも、女王様は赤いバラをご希望だったからね〜。」

「間違ってしまったのは俺たちの責任ですが…」

「首をはねられてしまうから。」


「何…?」


男の子の口から出た衝撃の言葉に泰衡様は眉を顰めます。

こんな可愛らしい、しかも子供がこんなことを言うなんて…。


「…とんでもない奴だな…その女王とやらは…。」


さすがに不快に思った様子の泰衡さま。
はき捨てるようにそう言うと、意外なことに男の子が反論しました。


「そんなことはない。神子は優しい。」

「…?」

「白龍、この世界では先輩は『神子』じゃなくて『女王』なんだよ。」

「あ、そうか。私の女王様は優しい人。」

「その程度のことで首をはねるなどと言っているのにか?」

「ま、それは…」

「マニュアルだからということで…;とにかく先輩のせいじゃありませんから。」

「譲君、女王様。」

「あ、はい…すみません景時さん;」

「???」


何だかわけがわかりませんが…、
別に女王様が特別悪い人というわけではないということでしょうか?

少なくとも、この3人には慕われているようです。

そんなこんな話をしていましたが、
泰衡様は本来の目的を思い出し、3人に尋ねようとしました。


「…そうだ、この辺りで時計を持ったウサギを…」

「こんな所で何をしてるの?」

「!」


泰衡さまが3人に例の時計ウサギのことを尋ねようとした時、
誰かがやってきて、泰衡さまの言葉を遮りました。
3人は少し焦り、慌てて頭を下げ、泰衡さまはその人物を振り返ります。

そこに立っていたのは綺麗な紫色の長い髪の女性でした。
ハート模様のドレスを着ています。
どうやら彼女が女王様でしょうか?


「神子!」


男の子は女王様に嬉しそうに駆け寄りました。


「白龍、今の私は一応神子じゃなくて女王だからね?」

「あ、ごめんなさい神…女王様。」


駆け寄ってきた男の子に女王様は笑顔を向け、そう窘めました。
ただ、別にキツイ言い方ではなく、
素直に言いなおした男の子に女王様はまたにっこりと笑顔を見せています。

とても、バラの色を間違えたくらいで首をはねる。
等と言う無茶なことを言う人には見えません。

…と、思ったら…。


あーー!!このバラは何ですか!譲君!景時さん!白龍!!」

「あ!ご、ごめん望美ちゃん!まだ途中で…;」

「いえ;それ以前に植え間違えに問題が…;」

「ごめんなさい神子!私もがんばるから…!」


ペンキを塗りかけのバラを見つけて激怒する女王様。
…バラがそんなに重要なのでしょうか…?

このままでは3人は首をはねられてしまうのか…!

流石に少し気になった泰衡さまがその場を動けずにいると、
神子様は少し3人を怒鳴りつけた後、泰衡さまに気づき、
同時に何か思い出したのか手を叩くと、


「あ!今日は裁判があるんだった!
 譲君、景時さん、白龍!あそこの被告人を捕まえて!」


と、泰衡様を指差しました。



「・・・・は!?な、何を言ってる!何故俺が…!!」

「わかった、任せて神子。」

「女王様の命令なら仕方ないね。」

「悪く思わないで下さい。」

「なっ!人の話を…!!」


何だかよくわからない間に泰衡様は3人に捕らえられ、
大きな裁判所へと送られてしまいました…。


「何がどうなってるんだーーー!!!」



***



所変わって裁判所。

泰衡さまは被告人席に立たされていました。


「一体俺が何をしたと言うんだ!!」


いきなりこんな場所につれてこられ、
いきなり犯人扱いされる泰衡さま。

…それ以前に『何の』犯人なのかもわかりません。
流石に取り乱すのも当然でしょうか。

そんな泰衡さまの前、裁判長の席に女王様が現れました。


「神子殿…!」

「今は女王様です、ではこれより裁判を開始します。」


神子様…いえ、女王様は泰衡さまは無視して裁判開始を宣言しました。
そして傍らには…。


「何とか間に合ったようですね…。遅れてすみませんでした。女王様。」

「銀…!」


泰衡さまがずっと探していた時計ウサギさんがいました。


「おい!銀!!」


泰衡さまは必死で声をかけましたが、
ウサギさんには気づいてもらえないまま裁判が始まってしまいました。


「第一の証人前に。」


女王様がそう告げる、出てきたのは泰衡さまが最初に会った動物。
船酔いの薬をくれた天狗の先生と、オレンジの着物のウサギでした。


「罪状を述べて下さい。」


女王様がそう言うと、オレンジの着物のウサギが恐る恐る口を開きました。


「その…彼が犯人だというつもりはないのだが…。」

「私たちの部屋が壊されて、水浸しになっていた。」

「部屋…壊れて…水浸…し……!」


第一の証人の話を聞いて固まる泰衡さま。
部屋を壊して水浸し…といえば最初の落ちてきた部屋のことでしょう。
それなら犯人は確実に泰衡様です。


(黙っていろ…!)

「如何ですか?被告人。」

「…………」

「被告人?」


わざとではないとはいえ、
事実なので答えられないのか、泰衡さまが困っていると、


「女王様。時間がおしていますので全ての証人の話を聞いてからで良いかと…。」


時計ウサギさんがフォローしてくれました。


「そうですね、じゃあ次二人目の証人どうぞ。」


というわけで、審議はまだ続くようです。
二人目に入ってきたのは…、


「弁慶!!」


帽子屋さんでした。


「彼は私たちのお茶会に不法侵入した挙句、
 私の勧めたお茶を飲みもせずにお茶会を去って行ったんですよ。」


帽子屋さんがさめざめとそう言うと、ザワザワとざわめき立つ裁判所。
泰衡さまが悪い人と認識されてしまったのでしょうか。


「冗談じゃない!あれは飲み物ではない!」

「心を籠めてお出ししたのに…。」


ざわめきが酷くなりました。
泰衡さまますますピンチです。


「………」

「はい、3人目の証人。」


三人目の証人は…。


「城に続く木の道を教えてやったんだが…。」

「木が切り倒して元に戻らなくなった……。」


チェシャ猫さんたちでした。


「なっ!あの木を切り倒したのはお前…」


チェシャ猫さんたちの発言に慌てる泰衡さまでしたが、
銀髪のチェシャ猫さんは事も無げに返しました。


「はて…生憎俺に覚えはないが…ククッ…」

「なっ……!」


流石の泰衡さまも返す言葉がないようです。
そして極めつけは…、


「そして、最後は私のパイを盗み食いしたことです!


女王様が高らかに宣言しました。


「それはまったく身に覚えはない!!」


泰衡さまは激怒し、反論しましたが…


「とにかく貴方は有罪です。」

有罪ですね。」

有罪だな…。」

「ちょっと待て!話を…!」


判決は決定なのか、誰もが有罪を主張しました。
誰も話を聞いてくれる様子はなく…絶望しそうになった泰衡様でしたが、
そんな泰衡さまの耳にあの時計ウサギの声が…


「泰衡さま」

「銀…!俺は何も…!」


『泰衡さま』



『泰衡様』



「泰衡様!」

「………!」

「如何致しましたか?何やら魘されていたようですが…。」

「…銀…。」


追い込まれた泰衡さま。
一瞬目の前が真っ白になったように感じましたが、
次に目に入ったのは心配そうな銀の顔でした。


「………」


何やらまだ頭が混乱している泰衡さまはじろじろと銀の頭を見つめましたが耳はないようです。


「?泰衡様?」


ウサギの耳や時計はない、いつもの銀。


「いや…なんでもない…。」


どうやら夢でも見ていたのでしょうか…?
いつもの元気がない泰衡様に、銀は少し考え込み、
思い出したように笑顔を向けるとこんなことを言いました。


「どうでしょう。お目覚めにおいしいお茶でも。
 高館でお茶会をされると弁慶様が仰っていましたよ。
 さんも私もお誘い頂いていますので泰衡様も如何ですか?」

「べ、弁慶の…お茶会だと…?;;」

「??」


……まだ悪夢は終っていないのでしょうか…?







to be continue...?






キャスト

泰衡さま…泰衡様

時計ウサギ…銀

天狗…リズ先生
ウサギ…敦盛さん

帽子屋…弁慶さん
三日月ウサギ…九郎さん
ねむりネズミ…ヒノエ君

チェシャ猫…将臣君・知盛さん

トランプの兵士…譲君・景時さん・白龍

ハートの女王…白龍の神子



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2009.01.18