-赤ずきんちゃん-
とある森の中に、女の子とお母さんの親子が住んでいました。 女の子はという名でしたが、赤いずきんが良く似合うので 「赤ずきんちゃん」と呼ばれていました。 ある日、お母さんが赤ずきんちゃんにおつかいを頼みました。 「おい、。」 「はい、や……お母様…;」 「…これを、伯母上の所へ持って行け。」 泰衡様…もとい、お母様は、赤ずきんちゃんにお見舞いの品を渡しました。 「いいか、くれぐれも変な奴についていくな。道草はするなよ。 そして、届けたらすぐに帰って来い。わかったな?」 「はい、お母様。」 お母様は赤ずきんちゃんにしっかりと言いつけ、送り出しました。 *** 赤ずきんちゃんが森を歩いていると、オオカミがやってきて声をかけました。 「よお、赤ずきんじゃねぇか!」 「あ、オオカミさんこんにちは。」 「どっか行くのか?」 「はい、み…おばあ様の所へお見舞いです。」 「望美?具合でも悪いのか?」 「はい、少しお風邪を召されたそうです。」 お母様には内緒ですが、赤ずきんちゃんとこのオオカミさんはお友達でした。 そして、このオオカミさんは神子様…おばあ様とも仲良しでした。 「そうか…なら俺からも何か届けてくれねぇか?」 「はい、いいですよ。それならお花でも摘みましょうか?」 「…そうだな…そうするか。」 赤ずきんちゃんとオオカミさんは近くの花畑でお花を摘むことにしました。 赤ずきんちゃんとオオカミさんが花を摘んでいると、花畑の端で何かが動きました。 「重盛兄上は何をしている…?」 昼寝をしていた弟オオカミさんが目を覚まし、 赤ずきんちゃんと兄さんオオカミを見ていました。 「なかなか旨そうな小娘じゃないか…。」 弟オオカミさんは赤ずきんちゃんを見て舌なめずりをしました。 どうやらお腹が空いているようです。 「ところでその見舞いには何が入ってんだ?」 「パンとワインです。」 「ワイン!?望美は酒は飲まねぇと思うぜ。」 「そうですか?じゃあ、オオカミさんに差し上げましょうか?」 「お!そりゃラッキーだな!サンキュー♪」 「いえ、では、私そろそろ行きます。」 「ああ、望美によろしくな。」 「はい。」 赤ずきんちゃんはオオカミさんにワインをあげて、 オオカミさんからお花を預かり、神子様……いえ、 おばあさんの家に向かいました。 「お〜い、知盛!酒を貰ったから一杯やろうぜ! いい加減起きろよ……あれ?」 赤ずきんちゃんから貰ったお酒を飲もうと、 弟オオカミを探す重盛兄上でしたが、 弟、知盛オオカミさんの姿はありませんでした。 「あいつ…どこ行ったんだよ…。」 *** その頃、弟知盛オオカミさんは赤ずきんちゃんを食べようと、 おばあさんの家に先回りしていました。 「ククッ……ここか?」 知盛オオカミさんはおばあさんの家のドアを蹴り飛ばし中に入りました。 「!?」 突然の物音に驚いて望美おばあさんが起き上がりました。 「おばあさんはやめて!…って、何貴方!将臣君じゃないわね。」 「ククッ…重盛兄上がご希望か?妬けるな。 ばあさんと聞いていたがいい女じゃないか。 まずは前菜にお前を頂くとするか…。」 知盛オオカミさんはおば…神子様を食べようと近づいて行きました。 「人の家を壊しといて何を言ってんのよ!」 神子様は刀を抜いて構えました。 「クッ…良い目だな。俺とやる気か?」 知盛オオカミさんは嬉しそうに笑うと神子様に襲い掛かりました。 *** 激しい死闘の末…。 おば…神子様は一瞬の隙をつき逃げ出す事に成功しました。 風邪で体力のない神子様ではオオカミさんと 互角に戦うことは無理だったのです。 「クッ…まあ良い。次に会う時は必ず…。 では、主賓が来るまで一眠りするか…。」 知盛オオカミさんは神子様との戦いに満足し、 おばあさんのベットに横になりました。 *** しばらくすると、赤ずきんちゃんがおばあさんの家へやって来ました。 「おば……!?神子様!!」 入り口の扉が壊れているのを見て、赤ずきんちゃんは慌てて 家の中に入り、おばあさんのベットに駆け寄りました。 「神子様!神子様!ご無事ですか!」 必死に呼びかける赤ずきんちゃんに、 「うるさい……。」 と低い声が答えました。 「…?え……きゃあ!?」 驚いている赤ずきんちゃんは腕を引っ張られ、 ベットに引き込まれてしまいました。 「…貴方は…オオカミさん?」 「ああ、やっと主賓の到着か…待ちくたびれたぞ…。」 知盛オオカミさんは赤ずきんちゃんを捕まえたままそう呟きました。 身動きできない赤ずきんちゃんは恐る恐る口を開きました。 「…あ、あの…神子様は?」 「さあな…だが、いい女だったぜ…。 まあ、お前は…すぐに楽にしてやるよ…。」 知盛オオカミさんがそう言って赤ずきんちゃんを食べようとした時…。 ドン!!! 「「!!?」」 大きな音がして、オオカミさんと赤ずきんちゃんの間を 銃弾が通り過ぎました。 「…あ」 銃弾が飛んできた方に目をやると、狩人の銀……ではなく、 今にもブチ切れ寸前の泰衡お母様が銃をかまえて立っていました。 「貴様……その手を離せ…!」 「や、泰衡様…お、落ち着いて下さい。」 狩人の銀さんは必死にお母様を宥めています。 「クッ…これはとんだ邪魔が入ったな…。」 知盛オオカミさんは泰衡お母様を眺めながら楽しそうに言いました。 「さっさと離れろ!!」 いつまでも赤ずきんちゃんを放さないオオカミさん痺れを切らした泰衡お母様。 大声でもう一度言いました。 泰衡お母様の鬼気迫る様子に赤ずきんちゃんも焦りオオカミさんを見ました。 「あ……あの、離して下さい。」 オオカミさんは不安そうな赤ずきんちゃんの様子を楽しげに眺め、 離れるどころか、顔を近づけました。 「「!!」」 それに怒った泰衡お母様がもう一度発砲しかけた時……。 「いい加減にしろ!」 誰かがゲシッと知盛オオカミさんを蹴り飛ばしました。 「あ、……オオカミさん。」 「大丈夫か?」 知盛オオカミさんを蹴り飛ばしたのは、 赤ずきんちゃんと仲良しの将臣オオカミさんでした。 「はい、ありがとうございます。」 赤ずきんちゃんが起き上がり、ベットから降りると 泰衡お母様は銃を投げ捨て、慌てて駆け寄りました。 「、大丈夫か?」 「はい、や…お母様…すみません…。」 「いや…お前が…無事なら…。」 申し訳なさそうに謝る赤ずきんちゃんに泰衡お母様が優しく声をかけた時…。 「ちゃん!」 「!神子様!」 将臣オオカミさんの後ろからおばあさ…いえ、神子様が顔を出しました。 「ちゃん…いや、赤ずきんちゃん大丈夫?」 「私は平気です。…神子様、ご無事だったんですね…よかった…!」 赤ずきんちゃんは神子様に駆け寄ると思い切り抱きつきました。 「もちろん!当たり前だよ!ゴメンね…。」 神子様も赤ずきんちゃんを抱きしめました。 「いえ、神子様がご無事でいて下されば…。 オオカミさんに食べられてしまったのかと…!」 泣きそうな声でそう言う赤ずきんちゃんを神子様は強く抱きしめました。 「食べられるわけないでしょ!将臣君を探しに行ってたのよ!」 「おう、知盛の奴がいねーから心配になってよ。」 将臣オオカミさんも傍へ行くと、ポンポンと赤ずきんちゃんの頭を撫でました。 「荒っぽい兄上だ…。」 知盛オオカミさんがのっそり起き上がった時、 チャキッと背中に銃が突きつけられました。 「なんの真似かな……重衡。」 「赤ずきんさんはおろか、神子様にまで危害を加えようとされるとは… 許しませんよ。兄上?」 にっこり笑顔でそう言ったのは狩人の銀さんでした。 知盛オオカミさんと狩人の銀さんの間に静かに激しいブリザードが吹き荒れました。 が、それを破ったのは神子様の大きなため息でした。 「……それにしても…みんな私の家壊しすぎ…;」 神子様の言葉にみんなはっとして家を見回しました。 知盛オオカミさんが蹴破ったドアは壊れ、 将臣オオカミさんが入ってきた窓もぶち破られ、 蹴飛ばされた知盛オオカミさんがぶつかった机は壊れ、 泰衡お母様が発砲したため壁に穴が空き、 投げ捨てた銃があたって、棚の上の花瓶や小物が割れていました。 「特に泰衡さん!!」 「何故俺なんだ!」 神子様は泰衡お母様に詰め寄りました。 「あの花瓶お気に入りだったんですよ!どうしてくれるんですか!!」 「花瓶など買い換えればいいだろう!明らかにドアや窓の方が損害だ!」 泰衡お母様も負けじと反論しましたが、 「…あれはちゃんが私のためにプレゼントしてくれたのに…。」 と、神子様が言うと慌てて赤ずきんちゃんを見ました。 泰衡お母様と目が合うと、赤ずきんちゃんは困ったような悲しそうな顔をしました。 「……うっ;」 こうなると泰衡お母様は文句も言えません。 そこで狩人の銀さんはすかさず神子様に歩み寄りました。 「次は私が神子様のために心を込めてお贈り致しますのでお許し下さい。」 ちゅっと神子様の手に口付けをして、狩人銀さんはそう言いました。 銀さんのフォローでなんとか場の雰囲気が治まった時、 将臣オオカミさんがため息をついて肝心なことを口にしました。 「しかし、これじゃ…しばらくこの家で生活は無理だろう…。」 「「「………」」」 窓やドアが壊れていては不用心ですし、その通りです。 一同沈黙しましたが、 「「それなら…」」 知盛オオカミさん、狩人銀さんが同時に口を開いた時。 「それなら神子様は私達の家でお過ごし下さい!」 赤ずきんちゃんが先に言葉を口にしました。 「な……!?」 泰衡お母様は驚き、慌てましたが、 赤ずきんちゃんは嬉しそうに言いました。 「私とお母様だけですし、お気になさらず。 神子様が居て下されば嬉しいです。」 赤ずきんちゃんの言葉に神子様は嬉しそうに笑いましたが、 ふっと意地の悪い顔になり泰衡お母様を見て、 「でも泰衡さんがダメって言うかもしれないし…。」 と言いました。 泰衡お母様が反論しようと口を開きかけた時、 「そんなことありませんよ!ね?お母様?」 先に赤ずきんちゃんが返事をし、にっこり笑顔でお母様を振返りました。 「うっ……;」 可愛い娘に笑顔で言われ、言葉に詰まる泰衡お母様。 なかなか返事を貰えず、赤ずきんちゃんが不安そうな顔になり、 泰衡お母様に尋ねました。 「あの…ダメ…なんですか?」 「っ〜〜〜///」 可愛い可愛い愛娘に、うるうると泣きそうな表情で見上げられ、 お願いされては、流石の泰衡お母様も断ることはできません。 真っ赤になった顔をプイッと背けると、 「……お前の好きにしろ。」 と、ボソッと言ってくれました。 「ありがとうございます!泰衡お母様!!大好き!」 泰衡お母様の返事を聞いて、赤ずきんちゃんは大喜び! ガバッと泰衡お母様に抱きつきました。 「○×■△◎///!?」 赤ずきんちゃんの突然の行動に泰衡お母様は大パニックです。 そんな様子を神子様は微笑ましく見ていました。 神子様を誘い損ねた、知盛オオカミさんと狩人銀さんもちょっぴり残念そうですが。 神子様の嬉しそうな表情を眺めていました。 こうして、赤ずきんちゃんとおばあさんは一緒に仲良く暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし。 *** キャスト 赤ずきんちゃん・・・ お母さん・・・泰衡様 兄オオカミ・・・将臣君 弟オオカミ・・・知盛さん おばあさん・・・神子様 狩人さん・・・銀 配役は「平泉」&「裏熊野」でお送りしました〜(笑) おまけ*** 「「「お疲れ様でした〜。」」」 神「何怒ってんですか?泰衡さん?」 泰「……フン」 「…すみません、泰衡様…。」 泰「何故お前が謝るんだ?」 「あ、いえ…。(なんとなくです…;)」 銀「まあまあ、泰衡様。何かご不満でも? 活躍されていらしたのに…。(私の見せ場まで横取りして…。)」 泰「何か言ったか?銀?」 銀「いえ、何も。」 泰「大体何故、俺が母親役なんだ。父親でもなんでもいいだろう!」 神「管理人曰く、赤ずきんちゃんの保護者は母親のイメージだかららしいですよ。」 泰「だったら女にやらせればいいだろ!何故俺が女装など!」 銀「女性は少ないですし。よろしいではないですか、いい役どころでしたよ。」 泰「………」 神「私なんておばあさんの役だし…。」 銀「神子様はどのようなお姿でもお美しいですよ。」 将「見た目はそのままなんだからいいだろ。」 神「まあ…でもね〜。」 知「クッ、いいじゃないか神子殿。俺と一戦やれたわけだし…。」 神「よくない!よかったのは知盛でしょ!」 将「……ってか、大体ばあさんが刀抜いてよかったのか;」 神「私もどうかと思ったけど…。」 銀「管理人の方曰く、「流れでそうなった」「遙かっぽいからまあいいや」だそうです。」 知「いい加減な管理人だ…。」 管理人(ごめんなさい…。) 銀「でも配役は気に入ってるそうです。」 泰「俺が女装なのにか!(怒)」 神「いいじゃないですか!最後良い思いをしたし!」 泰「///!!?そ!そういうことじゃない!!」 将「まあ、満足だそうだ。」 泰「そんなこと言ってない!!」 銀「泰衡様、落ち着いて下さい。」 知「ふぁ…俺はもう帰らせてもらうぞ…。」 完 戻る 2007.05.16
すっかり遅くなりました!3月拍手お礼でした「赤ずきんちゃん」パラレルです。
本編では関係上(?)登場しない知盛さんが初登場! こういう形でしか登場できない彼です…。結構好きなんですけどね〜。 配役は結構あっさり決定し、ものすごい過保護なお母様になってしまった泰衡様; でもお気に入りです♪(笑) そして、良いとこなしな気がしたので、最後主人公が抱きつくシーンを追加しまいた。 つまり最初はなかったシーンなのですが、ストーリーが短いと思ってくっつけた、 おまけの会話がそのお陰で成立したので、それはそれでよかったです。 なお、ギャグまっしぐらなこの作品は本編とは一切!関係ありませんので!(^ ^;Δ |