-兄弟-
「あ〜あ、今日はどうすっかな〜。」 何となく天気の良い日。 晴れやかな空に誘われて、天の青龍、有川将臣殿はぶらぶらと町を歩いていた。 もとより散策好きの彼はもうこの平泉にもすっかり精通していて、 今日はまだ見ていない所や入っていない店にでも行こうかと考えていた。 「そうだな…ま、たまには望美や譲に土産でも…ん?」 いつもは大体自分の思うまま気の向くままにふらふらとしている将臣殿だったが、 たまには…と幼馴染と弟を思い浮かべた時、視界の端に見覚えのある人物が映った。 白い髪と白い着物の小さい少女。後ろ姿だがまず間違いない。 将臣殿が後姿を目にしただけなので、少女は気づいてはいない。 何か運んでいるのか少しふらふらしながら歩いていた。 少し気になりつつ将臣殿が声をかけようとした時、 「………っ!」 「あ、おい!」 少女は躓き、転びそうになった。 将臣殿は慌てて駆け出し、間一髪の所で少女を助けた。 「……大丈夫か?」 少女を受け止め、少女が持っていた荷物も なんとか落とす前に受け止め、声をかけた。 「すみません;………あ、将臣様…?」 「気ぃつけろよ?」 苦笑いした将臣殿に気付き少し驚いた顔をした少女。 数回顔を合わせた、藤原の屋敷、そして泰衡様に仕えている少女、 「」だった。 *** 「あの…ありがとうございました…将臣様。それに…その…すみません…;」 その後、当然のようにに付き合い、変わりに荷物を持ってくれている 将臣殿には恐縮し、申し訳なさそうに頭を下げた。 お使いの仕事。の仕事の範囲だし、いつものことだが、 今日は思いの他量が多く、少し苦労していた。 注意して歩いていたが、転んでしまい、しかも実は割れ物も荷物の中にあって、 一瞬心臓が止まるかと思っただったが、 将臣殿のお陰で間一髪で助かったのだ。 それだけでも感謝してもしきれない程助かったのに、その上まだ手伝わせているなんて…。 「何、気にすんな。」 申し訳なさそうに顔を伏せているに、 将臣殿は優しく声をかけ、ぽんぽんと頭をなでた。 「それに、こういう時は言うことは、 『すみません』より『ありがとう』の方が良いもんだぜ?」 そして、片目を閉じて見せた将臣殿にはホッとし笑顔をみせた。 「……ありがとうございます…将臣様。」 「ああ。」 「ふふ……。」 「ん?何だ?」 安心した顔になりお礼を言ったは、将臣殿の顔を見ると嬉しそうに笑った。 何か思い出したような笑いに、将臣殿が不思議そうに尋ねると、 は嬉しそうな顔のまま、懐かしそうに、 「兄様に…将臣様は兄様に似ていると思いまして…。」 と言った。 「兄…様?」 「はい。」 「お前のか?兄貴がいるのか?」 「はい。」 にっこりと嬉しそうに話すに、その『兄』の存在の大きさを将臣殿は何となく感じ取った。 気にもなったし、尋ねたいとも思ったが、それだけ『大切な兄』が今まで話題に登らなかったこと、 未だに会っていないことから、少なくとも、今は会えない状態なのだということも何となく気付いた。 「へ〜そうなのか。」 ちらりとの表情を横目で見、嬉しそうな表情から、 そこまで悪いことはないとは思ったが、何となく触れる事は避けた。 折角笑ってくれた少女に悲しい顔をさせたくはなかったから…。 「そういえば、将臣様は譲様の兄様なんですよね? だからでしょうか?兄様と似ていると感じるのは…。」 「ん〜どうだろうな…。別に人それぞれじゃないか? 経正も兄貴だが…俺とは違うタイプだし…。」 「経正…様?ですか?」 「ああ、敦盛の兄貴だ。」 「敦盛様の?敦盛様にも兄様が?」 「ああ。泰衡のやつにもいるんじゃないか?たしか…国衡…だっけかな?」 「泰衡様も兄様がいらしたのですか?…私…存じませんでした…;」 「あ〜この時代は兄弟いるやつ多いんじゃないか。景時も朔の兄だろ?」 「あ、そうですね。本当ですね、多いですね。……それに、みんな兄様ですね…。」 「……そういやそうだな。面白いぐらい兄貴ばっかりだな;」 何だか変な話で盛り上がっている。 だが、実際考えるとそうだなと、将臣殿は苦笑いし、 楽しそうに話しているを見ていると、こんな会話も楽しいと思い笑った。 「ふふ、そうですね。でも兄弟がいるのは嬉しいですよね。」 「あ〜まあな…、面倒な時もあるけど…ま、良いもんだろうな。」 「将臣様も譲様が大切なんですね。」 「……まあな。」 そして、将臣殿はの言葉に素直に頷いた。 正直ちょっと認めるのは照れくさいものがあるかもしれないが、 の言葉はどうも素直な言葉を引き出す。 まっすぐな言葉と瞳に、つい言ってしまうのだ。 さっき彼女に会う前、珍しく望美や譲のことを考えたが、 本当は、二人のことを思いつく前に、彼女のことが目に付いていたのかもしれない、 それで二人のことを思い出したのかも…。 そんな錯覚さえ感じそうだった。 「お、そろそろだな。」 「あ、本当ですね。本当にすみません…いえ、ありがとうございました。 将臣様。屋敷までお付き合い頂いて。」 「なに、礼はいらねぇよ。困ってる時はお互い様だろ?」 そうこうしている間に、屋敷に到着し、 将臣殿はに荷物を渡すとひらひらと手を振って帰っていった。 はそんな将臣殿を笑顔で見送り、の笑顔を見た将臣殿は、 「望美と譲に…なんか買って帰るか…。」 と言って、市の方へと歩いていった。 *** 屋敷へ帰ってきたが荷物を持って庭を通りかかると、 偶然部屋を出た泰衡様と顔を合わせた。 泰衡様はの持っている大荷物に気付くと少し眉を顰めた。 「…何だその荷物は?買出しだったのか?」 「あ、はい。」 「一人でか?」 「はい…あ、いえ!将臣様が手伝って下さいましたので、大丈夫でしたよ?」 以前に買出しに出た時、その時もたまたま大荷物で、 ふらついたは荷物を持ち帰る際、荷物の方を庇って怪我をしたことがあった。 その報告を受けた泰衡様は、荷物の多い時は誰か付き添わせるようにと に言いつけていたのだ、銀でも構わないから言う様にと。 今回すっかり忘れていた。 否、そこまで荷物が増えるとは思っていなかったからなわけだが…、 泰衡様の言い付けを守らなかったことに気付いて焦ったため、慌てて言った。 「将臣?」 「は、はい…町でお会いして…手伝って下さいました…。」 「………」 「あ…あの;あの…;」 だが、それでも不機嫌そうな泰衡様の表情は変わらない。 まあ、将臣殿に会ったのは偶然で、会わなければ結局泰衡様の言いつけを破っていたのだ、 怒っていて当然だとは言葉に詰まった。 何とか話題を変えようと、は思い出したように口を開いた。 「あ…!あの、そういえば…泰衡様は兄様…いえ、兄上がいらっしゃるのですか?」 「ん?」 突然のの質問に泰衡様はふと不思議そうな顔になった。 「いえ…その将臣様とお話をしていて…将臣様は譲様の兄上で、 景時様も朔様の兄様で、泰衡様にも兄様がいらっしゃるとお聞きしたもので…。」 「……ああ、いるが…異母兄弟だ。 そこまで親しい間柄でもない。…お前が気にすることはないからな。」 「え?は、はい…?」 特に何気ない問いのつもりだったが、泰衡様はまた少し険しい顔をした。 泰衡様は兄である国衡殿とはあまり良い関係ではないからだが、 にはそのことはわからないので、今度はが不思議そうな顔をした。 「お前はあくまでまで俺の…… と、ともかく、お前が会うようなことはない。その必要もない。」 「は、はい。」 「分かったら仕事に戻れ。今後は気を付けろ。」 あまりその話題に触れたくはないのか、 泰衡様は忠告だけするとさっさとその場を去っていった。 は不思議に思ったが、一先ず怒られなかったことにほっとし仕事に戻っていった。 戻る 2009.09.22
何か変な終わり方になっている気がしますが…(爆)
八葉メインのお話第一弾でした! 最初の所にもページにも書いていますが、『メイン』であって『お相手』ではないので、 甘い話とかは基本的にはないです。うちの夢主は泰衡様一途なので!(笑) なのでこの八葉部屋の話は基本的に最後泰衡様オチになるのが基本かと思われます。 しかし…今回の話はホント微妙だな;(汗) 遙か3には兄が多い(姉よりも)と思って思いついた話だったんですが上手く纏まらず; 泰衡様の兄も名前だけで。まあ、ゲーム中に出てこないのでどうして良いかわかんなかったんですが; 将臣君も難しいし…またリベンジしなきゃですかね; まあ、とりあえず八葉制覇を目標にがんばります! |